「子どもがインフルエンザに。同じ部屋で寝ていたけれど、自分にもうつる確率はどれくらい?」と心配になっていませんか。
インフルエンザが家族にうつる確率は、研究によって差がありますが1割前後(数%から2割程度)とする報告が多く、同じ家で過ごしていても必ずうつるわけではありません。
ただし、「うつらないだろう」と対策を怠ると、高齢の家族や持病のある家族にまで感染が広がることがあります。
この記事では、うつる確率の目安、うつらない人がいる理由、いつまでうつるのか、家庭でできる対策、ワクチンや予防投与について解説します。
家族と自分の体を守るための参考にしてください。
インフルエンザがうつる確率はどのくらい?
家族がインフルエンザにかかると、真っ先に気になるのが「自分もうつるのか」という点です。
結論から言うと、うつる確率は「◯%」と一つの数字で示せるものではなく、条件によって大きく変わります。ここでは、研究で報告されている目安と、その数字の読み方を整理します。
家族内でうつる確率の目安
同居する家族にどのくらいうつるかは、二次感染率という指標で調べられています。家族の1人が発症したあと、ほかの家族のうち何割が感染したかを示す数字です。
国内外の研究をまとめた報告では、検査で確認された家庭内の二次感染率は1〜38%と研究によって大きな幅があるとされています。
- 香港の家庭内研究(2010年報告):同居家族の二次感染率は8〜9%程度
- 南アフリカの家庭内研究(2015年報告):検査で確認された二次感染率は約19%
- 国内の臨床試験(2020年報告):予防のための薬を使わなかった家族のうち、約14%がインフルエンザを発症
このように研究ごとの差は大きいものの、数%から2割程度に収まる報告が多く、1割前後がひとつの目安です。
なお、これは「家族の1人ひとりがうつる割合」であり、家族全員にうつる確率とは別の数字です。また、看病で長く近くにいる人や、年齢の低い子どもでは、うつる割合が高くなる傾向があると報告されています。
「◯%うつる」と言い切れない理由
研究ごとに数字がこれほど違うのは、うつるかどうかが次のような条件に左右されるためです。
- 接触の距離と時間:同じ寝室か、別の部屋か
- 部屋の換気:空気がこもっているか
- うつされる側の免疫:ワクチン接種歴や過去の感染歴
- 年齢:子どもは感染しやすい傾向がある
- その年に流行しているウイルスの型
さらに、研究によって「検査で陽性になった人」を数えるか、「症状が出た人」を数えるかも異なります。そのため、記事やSNSで見かける数字は、あくまで目安として受け止めることが大切です。
同じ部屋にいてもうつらない人がいるのはなぜ?
「ずっと一緒にいたのに、自分だけうつらなかった」という人も少なくありません。主な理由として、次のようなものが考えられます。
- ワクチンや過去の感染による免疫がある
- 浴びたウイルスの量が少なかった
- 感染しても症状が出ない(不顕性感染)
- 手洗いやマスクなどの対策が働いた
注意したいのは、「うつらなかった」と思っていても、軽い症状や無症状で感染している可能性がある点です。厚生労働省も、インフルエンザに感染していても症状が出ない場合や、軽い症状だけの場合があるとしています。
本人は元気でも、周りの人にうつす可能性はゼロではありません。条件ごとのうつりやすさの目安は、次のとおりです。
| 条件 | うつる確率が高くなりやすい | 低くなりやすい |
|---|---|---|
| 接触の距離・時間 | 同じ寝室で長時間過ごす | 別の部屋で過ごし、接触が短い |
| 換気 | 窓を閉め切っている | こまめに換気している |
| マスク | 患者・家族ともマスクなし | 患者・看病する人ともにマスクを着用 |
| ワクチン | 接種していない | 流行前に接種している |
| 年齢 | 乳幼児・子ども | 大人(ただし油断は禁物) |
インフルエンザがうつる経路
インフルエンザがうつる主な経路は、飛沫感染と接触感染とされています。
経路を知っておくと、家庭でどこに気をつければよいかが見えてきます。
飛沫感染
患者の咳やくしゃみ、会話のときに飛び散る小さなしぶき(飛沫)に、ウイルスが含まれています。
厚生労働省の資料では、患者からおよそ1〜1.5mの距離であれば、この飛沫が周りの人の鼻や口から入り、感染が起こるとされています。向かい合っての食事や、顔を近づけての会話はとくに注意が必要です。
接触感染
ウイルスが付いた手で触れた物を介してうつる経路です。
- 患者が咳を押さえた手で、ドアノブ・スイッチ・リモコンなどに触れる
- その場所を家族が触る
- その手で目・鼻・口を触ることで、ウイルスが体に入る
家庭の中では、気づかないうちに同じ物を触っていることが多く、手洗いが大切な理由になっています。
換気の悪い空間では感染が広がりやすい
窓を閉め切った部屋では、空気がこもりやすくなります。
厚生労働省は、飛沫感染や接触感染に加えて、ごく細かい粒子を吸い込むことによる感染(エアロゾル感染)も経路の一つに挙げています。状況によっては、患者と同じ空間にいるだけでうつることもあると考えられています。
加えて、空気が乾燥すると、のどや鼻の粘膜の防御機能が低下するとされています。冬の暖房で乾いた密閉空間は、うつりやすい条件がそろいやすい環境です。
インフルエンザはいつからいつまでうつる?
「いつまで気をつければいいのか」は、看病する家族にとって大きな関心事です。
ここでは、うつる時期の目安を順番に見ていきます。
発症の前日からうつる可能性がある
インフルエンザの潜伏期間は1〜3日程度とされています。
注意したいのは、発症する前日からウイルスを排出しているといわれている点です。つまり、熱が出る前の元気に見える段階から、家族にうつしている可能性があります。
家族の発症が分かった時点で、すでにウイルスに触れているかもしれません。だからこそ、そこからの対策が大切になります。
発症後3日間ほどが特にうつりやすい
一般に、発症後1〜3日ほどはウイルスの排出量が多く、うつしやすい時期とされています。
高熱や咳が強い時期と重なることが多く、看病で近くにいる時間も長くなりがちです。この時期は、部屋を分ける・マスクを着ける・換気するといった対策をとくに意識しましょう。
熱が下がってもしばらくはうつる可能性がある
インフルエンザは、発症前日から発症後3〜7日間はウイルスを排出しているといわれています。
ウイルスの量は解熱とともに減っていきますが、熱が下がった後もウイルスを排出するとされています。排出期間には個人差があるため、咳などが続いている間はマスクを着けて過ごすのが安心です。
学校については、学校保健安全法施行規則では、「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては、3日)を経過するまで」が出席停止期間と定められています。
一方で、大人の仕事については法律で一律に決まった期間はありません。勤務先の就業規則に従いつつ、この基準を目安にしてください。
| 時期 | うつる可能性の目安 |
|---|---|
| 感染から発症まで(潜伏期間:1〜3日程度) | 発症の前日からうつる可能性がある |
| 発症後1〜3日 | ウイルスの排出量が多く、特にうつりやすい |
| 発症後4〜7日 | 排出量は減るが、うつる可能性は残る |
| 解熱後 | 咳などが続く間はマスクなどの配慮が必要 |
インフルエンザがうつる確率を高める条件
同じ家に住んでいても、うつりやすい人と、うつりにくい人がいます。
自分や家族が当てはまるかどうかを確認しておきましょう。
うつりやすい人
次のような人は、うつりやすい、またはうつった場合に注意が必要です。
- 看病を担当している家族
- 乳幼児・高齢者
- 持病のある人、妊娠中の人
- 睡眠不足や疲労がたまっている人
- その年のワクチンを接種していない人
なかでも高齢者や持病のある人、妊娠中の人は、かかった場合に重症化しやすいとされています。うつる確率を下げるだけでなく、早めの相談も大切です。
うつりやすい状況
日常のなかで、次のような状況はうつる確率を高めやすくなります。
- 患者と同じ寝室で寝ている
- 食事を一緒にとっている
- 窓を閉め切り、換気をしていない
- 暖房で室内が乾燥している
- マスクを着けずに近い距離で会話している
研究でも、同じ寝室で寝る、一緒に食事をとるなど接触が密な家族ほど、うつりやすい傾向が報告されています。
家族がインフルエンザになったときにうつる確率を下げる対策
家族が発症したら、できる範囲で早めに対策を始めることが大切です。
完璧を目指すより、続けられる対策を重ねることを意識しましょう。
部屋を分け、看病する人を決める
可能であれば、患者には別の部屋で過ごしてもらうのが基本です。
- 看病する人は、できるだけ1人に決める
- 高齢者や持病のある家族は、患者との接触を減らす
- 患者が共用スペースに出る時間を短くする
看病する人を決めておくと、ウイルスに触れる家族の数を減らせます。
マスク・手洗い・換気・加湿
基本の対策は、次の4つです。
- マスク:患者も看病する人も、不織布マスクを着ける
- 手洗い:石けんと流水で洗い、アルコール消毒も併用する
- 換気:こまめに窓を開ける、換気扇や24時間換気を回し続ける
- 加湿:加湿器などで湿度50〜60%を保つ
冬場は窓を開けると室温が下がるため、暖房を使いながら換気しましょう。対角線上にある窓やドアを2か所開けると、空気が入れ替わりやすくなります。
タオルや食器の扱い
家庭内では、物を介した接触感染にも気を配ります。
- タオルは共用しない
- 食器や衣類は、通常どおり洗えばよいとされている
- 鼻をかんだティッシュは、すぐにふた付きのごみ箱や袋に入れて捨て、手を洗う
- ドアノブ・スイッチ・リモコンなど、よく触る場所はこまめに拭く
食器を家族と別に洗う必要まではないとされているため、過度に神経質になりすぎないことも大切です。
別室がない家庭や子どもを看病するとき
住まいの事情で、部屋を分けられない家庭も多いと思います。その場合は、次の工夫を取り入れましょう。
- 寝るときはできるだけ距離をとり、顔の向きを互い違いにする
- 部屋の換気と加湿をこまめに行う
- 看病のあとは必ず手を洗う
小さな子どもの看病では、離れるのが難しい場面もあります。見守りを優先しつつ、できる対策を続けることが現実的です。
また、インフルエンザにかかったときは、薬の服用の有無にかかわらず、急に走り出すなどの異常行動が報告されています。とくに発熱から2日以内は、子どもを1人にしないよう見守ってください。
薬やワクチンでうつる確率は下げられる?
家族の発症をきっかけに、「薬やワクチンで防げないか」と考える人もいるはずです。
ここでは、それぞれの役割と注意点を紹介します。
インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンには、発病を一定程度抑える効果が認められており、重症化を予防する効果も期待されています。ただし、接種すれば必ずかからないというものではありません。
効果が出るまでには、接種から2週間程度かかるとされています。効果はその後約5か月間続くとされ、毎年の流行シーズンに合わせた接種がすすめられています。
そのため、家族が発症してから接種しても、すぐにうつる確率を下げることは期待しにくい点に注意が必要です。流行が本格化する前の接種を検討しましょう。
インフルエンザワクチンの接種については、当院の予防接種のページをご覧ください。
抗インフルエンザ薬の予防投与
同居家族が発症した場合に、抗インフルエンザ薬を予防のために使う方法があります。これを予防投与といいます。
添付文書では、原則として患者の同居家族または共同生活者のうち、次のような人が対象とされています。
- 65歳以上の高齢者
- 慢性呼吸器疾患・慢性心疾患のある人
- 糖尿病などの代謝性疾患のある人
- 腎機能障害のある人
加えて、患者と接触してから2日(48時間)以内に開始することが条件とされる薬があります。
予防投与は、健康保険が適用されない自費診療です。また、予防の基本はワクチンであり、予防投与はワクチンの代わりになるものではないとされています。
希望すれば誰でも受けられるものではなく、医師が必要性を判断します。対象に当てはまる家族がいる場合は、早めに相談しましょう。
家族がインフルエンザのとき自分が受診する目安
次のような場合は、医療機関への受診や相談を検討しましょう。
- 発熱・寒気・関節痛・筋肉痛などの症状が出てきた
- 持病がある、妊娠中などで、予防投与が必要か相談したい
- 高齢の家族や持病のある家族と同居している
受診するときは、家族が陽性と診断されたことと、家族の発症日を伝えると、診断の手がかりになります。
検査を受けるタイミングは別記事「インフルエンザの検査はいつ受ける?発熱から何時間後が目安か解説」で、熱がないときの受診については別記事「インフルエンザで熱なしだと検査してくれない?理由と受診の伝え方」で詳しく解説しています。
東京センタークリニックは、日本橋駅から近い内科・皮膚科などの診療を行うクリニックで、インフルエンザの診療や予防接種の相談にも対応しています。
まとめ
インフルエンザがうつる確率についてのポイントは、次のとおりです。
- 家族内でうつる確率は1割前後(数%から2割程度)とする報告が多いが、距離・換気・免疫などの条件で大きく変わる
- 同じ部屋にいてもうつらない人はいるが、無症状で感染している可能性もある
- 発症前日から発症後3日ほどが特に注意が必要で、熱が下がっても数日はうつる可能性がある
- 家庭では部屋を分ける・マスク・手洗い・換気・加湿を組み合わせる
- ワクチンや予防投与は、対象や時期を含めて医師に相談する
家族が発症したら、できる対策から早めに始め、自分に症状が出たときは無理をせず医療機関に相談しましょう。