「うちの子、背が伸びるのがゆっくりかも…」と気になったとき、どこに相談すればいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。そのようなときに頼りになるのが、小児成長外来です。成長ホルモン治療と聞くと特別なもののように感じるかもしれませんが、実際には子どもの成長を総合的に見守り、必要に応じてサポートしてくれるところです。成長ホルモン治療の特徴や診療の流れをわかりやすく紹介します。
小児成長外来(成長ホルモン治療)とは

小児成長外来は、子どもの「成長」に関する専門的な診療を行うところです。背の伸びがゆっくりだったり、同年代と比べて身長が低かったりすると、「大丈夫かな?」と心配になることがありますよね。小児成長外来では、そうした成長に関する悩みを受け止め、必要に応じて検査や治療を行います。主な治療法としては、成長ホルモン治療が挙げられます。聞き慣れない言葉かもしれませんが、成長を支える手段のひとつです。
小児成長外来を受診するケースとは
子どもの成長には個人差がありますが、「もしかして成長が遅いのかな?」と感じる場面は少なくありません。
たとえば、学校や園で背の順がいつも1番前だったり、同年代と比べて服や靴のサイズが小さかったり、成長曲線では、ずっと標準より下だったり。そのようなときに小児成長外来を受診するケースが多いです。
小児科や学校健診で「低身長の疑いがある」と指摘されて紹介されることもあります。中には、病気やホルモンの働きが関係している場合もあるので、早めに相談することで安心につながります。
子どもの身長の伸びに影響する要因
子どもの身長は、単に「背が伸びやすいかどうか」だけで決まるわけではありません。いくつかの要因が組み合わさって、成長のスピードや最終的な身長が決まっていきます。主なポイントを見ていきましょう。

身長の伸びに影響する主な要因
要因として挙げられるのは主に以下の6つです。
子どもの身長の伸びは「遺伝」という土台の上に、栄養・睡眠・運動といった生活習慣やホルモン・病気、環境の要素が積み重なって決まっていきます。
- 遺伝的要因(親の身長)
- 栄養
- 睡眠
- 運動
- ホルモンや病気の影響
- 心理的・社会的な要因
遺伝的要因(親の身長)
もっとも大きく関わるのは遺伝です。両親の身長をもとに「予想される身長」がある程度決まります。
栄養
成長に必要なエネルギーやタンパク質、カルシウム、亜鉛などの栄養素がしっかり摂れているかが重要です。特に偏食や食欲不振があると、成長がゆるやかになることがあります。
睡眠
身長を伸ばす成長ホルモンは、夜眠っているときに多く分泌されます。特に深い眠りの時間が大切です。十分な睡眠は、心身の回復だけでなく成長にも欠かせません。
運動
よく体を動かすことで食欲が整い、骨や筋肉も丈夫になります。外遊びやスポーツは、直接的に背を伸ばすだけでなく、間接的に成長を助ける要因です。
ホルモンや病気の影響
成長ホルモンや甲状腺ホルモンの働きは、身長の伸びに直結します。また、心臓や腎臓、消化器などの慢性的な病気があると、成長が遅れる場合もあります。
心理的・社会的な要因
ストレスや生活リズムの乱れも、食欲や睡眠に影響して成長を妨げることがあります。安心して過ごせる環境も大切です。
身長の伸びに影響する要因と成長ホルモン治療
身長の伸びには、遺伝や栄養、睡眠などさまざまな要素が影響しますが、その中でも特に重要なのが「ホルモンの働き」です。なかでも成長ホルモンは、骨や筋肉を成長させる大切な役割を担っています。
もしも体が十分な成長ホルモンを作れていなかったり、うまく働いていなかったりすると、身長の伸びがゆっくりになってしまいます。そうした場合に行われるのが成長ホルモン治療です。
治療と聞くと少し特別に感じるかもしれませんが、実際には不足しているホルモンを補い、自然な成長をサポートすることです。日々の生活習慣も大切にしながら、子どもの成長を後押ししていくのが、この治療の大きな役割です。
「成長ホルモンが病的に足りていない」「特定の病気が原因で成長が遅れている」と推測された場合には、更に詳しい検査(成長ホルモン刺激試験)を行い、基準に該当する場合は保険診療での治療がすすめられます。保険診療は当院では行っておりませんので、病気が原因ではないかと疑われる場合は、適切な医療機関をご紹介させていただきます。
代表的な病気は以下です。
- 成長ホルモン分泌不全性低身長症
体が十分な成長ホルモンを作れていないケース。 - ターナー症候群
女の子にみられる染色体の特徴による病気。 - 慢性腎不全などの慢性疾患
病気の影響で成長が遅れることがあります。 - 特発性低身長(原因がはっきりしない場合)
成長が著しく遅れており、医学的に治療が必要と判断されるケース。
当院で行う成長ホルモン治療の検査内容
成長ホルモン治療を始める前には、子どもの成長の状態やホルモンの働きを正確に把握するために、いくつかの検査が行われます。検査の種類や目的は以下のとおりです。
身体測定・成長曲線の確認
- 身長・体重・頭囲・体格の測定
- 過去の成長記録と比べて「どのくらいのスピードで成長しているか」を確認
- 成長曲線を使って、標準より著しく下回っていないかを評価
骨年齢の検査
- 手のレントゲンで骨の成熟度をチェック
- 実際の年齢に対して骨の成長が遅れているかを確認
- 治療でどのくらい身長を伸ばせる可能性があるかの目安になる
血液検査(ホルモン検査)
- 成長ホルモンやIGF-1(インスリン様成長因子-1)の値を測定
- 甲状腺ホルモンや副腎ホルモンなど、成長に関わる他のホルモンの働きもチェック
- ホルモンの異常がないか、治療の安全性を確認
成長ホルモン刺激試験(当院では実施しておりません)
- 成長ホルモンの分泌量を調べる特別な検査
- 食事や運動、薬で一時的にホルモンを刺激し、血中濃度の上がり方を測定
- 「成長ホルモンが足りているかどうか」を判断(保険適応になるかどうかを確認)するための検査
その他必要に応じた検査
- 心臓や腎臓の状態、血糖値などの健康チェック
- 安全に治療を進められるかを確認
成長ホルモン治療の概要

治療は長期間にわたることが多く、定期的な診察や検査を続けながら安全に行うことが大切です。通院頻度は、初期は月に1回ほど、その後は3か月に1回です. 費用や通院頻度については、医師や医療スタッフに相談すると安心です。
初診時の流れ
| 診療内容 | 費用の目安 | |
| 診察・問診 | 身長の伸び方や生活習慣、既往歴を確認します。 | |
| 検査の実施 | 身体測定、血液検査や骨年齢検査(レントゲン)、必要に応じて成長ホルモン刺激試験などを行い、体の状態を詳しく調べます。 | 血液検査15000円 レントゲン料10000円 |
| 治療方針の相談 | 検査結果をもとに、成長ホルモン治療の必要性や方法、期間について医師が説明し、保護者と一緒に決めます。 | 相談料 5,000円 |
再診時の流れ
| 診療内容 | 費用 | |
| 成長のチェック | 身長・体重・体格の変化を測定し、治療の効果を確認します。 | 血液検査(3か月に1回)15,000円 レントゲン(1年に1回)10,000円 |
| 注射・治療計画の調整 | 成長ホルモン注射 ソマトロピンBS皮下注10㎎「サンド」シュアパル 注射量や治療計画の調整成長のペースや検査結果に応じて、注射の量やタイミングを微調整します。 | 1本 50,000円 20㎏の体重のお子さんで2本/月使用します。(体重により使用本数が変わります) |
成長ホルモン治療の副作用と注意点
成長ホルモン治療は、体内で不足しているホルモンを補う治療法であり、一般的には安全性が高いとされています。しかし、まれに以下のような副作用が現れることがあります。
- 頭痛
- 痙攣(けいれん)
- 耐糖能異常(血糖値のコントロールが難しくなる状態)
成長ホルモン治療の注意点
成長ホルモン治療は、適切に行うことで効果的な治療法となりますが、注意点が存在します。治療を開始する前に、医師と十分に相談し、リスクが伴うことを理解した上で進めることが大切です。特に、以下の場合には治療を行う際に注意が必要です。
悪性腫瘍の既往歴がある場合
成長ホルモンは細胞の増殖を促進するため、悪性腫瘍がある場合には、治療が腫瘍の増殖を助長する可能性があります。そのため、悪性腫瘍がある場合は、治療が原則として禁止されています。ただし、脳下垂体周辺の腫瘍による圧迫や、腫瘍の摘出後にホルモン分泌が低下した場合など、特定の状況下では、医師の判断のもとで治療が行われることがあります。
腎臓や心臓に疾患がある場合
成長ホルモンは体内に水分を保持する作用があるため、腎臓や心臓に疾患がある場合、むくみなどの症状が現れることがあります。これらの疾患がある場合は、治療を行う際に十分な観察と注意が必要です。
脊椎側弯症(せきついそくわんしょう)がある場合
脊椎側弯症を持つ子どもに成長ホルモン治療を行うと、側弯の程度が強くなることがあります。このような場合は、治療を進める前に担当の医師と十分に相談することが重要です。
日常生活でのアドバイス

成長ホルモン治療は、注射だけでなく生活全体のサポートが大切です。規則正しい生活、栄養、運動、定期診察を組み合わせることで、治療の効果を最大限に引き出すことができます。
- 睡眠をしっかりとる
- バランスのよい食事
- 適度な運動
- 注射の管理
- 定期的な診察・検査を守る
- 心身の変化に注意
睡眠をしっかりとる
- 成長ホルモンは深い眠りのときに多く分泌されます。
- 夜更かしを避け、毎日規則正しい睡眠リズムを意識することが大切です。
バランスのよい食事
- 成長にはエネルギーや栄養素(たんぱく質、カルシウム、亜鉛など)が不可欠です。
- 偏食を避け、野菜・たんぱく質・乳製品をバランスよく摂ることを意識しましょう。
適度な運動
- 骨や筋肉を丈夫にするために、外遊びやスポーツなど適度な運動が役立ちます。
- 過度の負荷や怪我には注意しながら楽しむことがポイントです。
注射の管理
- 成長ホルモンは通常自己注射で毎日投与します。
- 注射のタイミングや場所、保管方法は医師や薬剤師の指示に従い、習慣化すると負担が減ります。
定期的な診察・検査を守る
- 身長の伸びやホルモン値、副作用のチェックのために、定期的な通院が必要です。
- 検査や診察の結果に応じて、注射量や計画が調整されます。
心身の変化に注意
- むくみ、頭痛、関節の痛みなどの体の変化や、気分の変化にも注意しましょう。
- 気になる症状があれば、早めに医師に相談することが安心です。
よくある質問
成長ホルモン治療は何歳までに受診したほうがよいですか?
思春期に入る前に受診いただくことをおすすめしますが、6歳~15最の方を対象としております。骨の成長板が閉じると、治療による身長の伸びが期待しにくくなるため、早めの相談が重要です。
成長ホルモンの注射は痛いですか? 毎日打つのでしょうか?
成長ホルモン治療は自宅で行う皮下注射が中心です。一般的には1日1回の投与ですが、針も細く、お子さまに負担が少ないよう工夫されたキットが使用されます。慣れれば多くのお子さまが自分で打てるようになります。
成長ホルモンの治療は保険適用されますか?
当院では自由診療になります。
両親が小柄なので、遺伝により治療してもあまり伸びないのではないでしょうか?
遺伝は身長に影響しますが、成長ホルモンの分泌や生活習慣など他の要因が関与しているケースもあります。まずは原因を特定し、治療や生活改善の可能性を見極めることが大切です。
どんな検査をするのですか?
初診では身長・体重測定、問診、必要に応じて血液検査やレントゲン検査(手の骨年齢)などを行います。
成長ホルモン治療をすると必ず身長が伸びますか?
治療効果には個人差がありますが、適切な時期に始めることで伸び率が向上することが多いです。成長のポテンシャルを最大限に引き出すには、早期の診断と継続的なフォローが重要です。
一度相談するだけでも構いませんか?
もちろんです。まずは身長の伸びが医学的に問題ないかを確認するだけでも大丈夫です。安心材料としてご相談いただく方も多くいらっしゃいます。
