汗疹(あせも)は、汗の通り道である汗管が詰まり、汗が皮膚の外に出られずに周囲の組織へ漏れ出すことで起こる皮膚の炎症です。医学的には汗疹(かんしん)と呼ばれ、大量に汗をかいた後に、赤いブツブツや透明な小さな水ぶくれが現れるのが特徴です。
汗疹は子どもに多い皮膚トラブルという印象がありますが、大人にも起こります。マスクの下、首まわり、背中、脇の下、下着や腕時計で締めつけられる部位など、汗がこもりやすく蒸れやすい場所であれば、年齢を問わず発症します。
多くの汗疹は、汗を残さないケアと環境の改善によって自然に軽快していきます。一方で、かき壊して細菌感染を起こしたり、汗疹だと思っていたものが別の皮膚疾患だったりすることもあるため、改善しない場合には皮膚科で確認することが大切です。
汗疹(あせも)とは
皮膚には、汗を分泌するエクリン汗腺が全身に分布しており、汗腺から皮膚の表面まで汗管という管が伸びています。
大量の汗をかき続けると、この汗管の出口が角質や皮脂、汚れで塞がれることがあります。行き場を失った汗は、汗管の途中から周囲の組織に漏れ出し、そこで炎症を起こします。これが汗疹です。
つまり汗疹は、汗そのものが悪いのではなく、汗が皮膚の中に閉じ込められることで生じるトラブルです。汗をかいたまま放置する時間が長いほど、汗管が詰まりやすくなると考えられています。
汗疹ができやすい部位
汗疹は、汗が溜まりやすく、蒸れやすく、こすれやすい部位にできやすいという特徴があります。
- 首まわり、うなじ
- 背中、胸元
- 脇の下
- 肘の内側、膝の裏
- お腹まわり(ベルトや下着の締めつけ部分)
- 足の付け根、おしり
- 額、髪の生え際(帽子やヘルメットの下)
- マスクで覆われる頬や口まわり
大人の場合は、下着のゴム、ブラジャーのワイヤー、腕時計のバンド、リュックのショルダー部分など、衣類や装着物が当たる場所に出やすい傾向があります。
汗疹ができやすい環境と状況
- 高温多湿の季節(梅雨から夏)
- 通気性の悪い衣類を長時間着ている
- スポーツや屋外作業で大量に汗をかく
- 発熱して寝汗をかいた後
- エアコンのない環境で長時間過ごす
- 入浴や着替えの間隔が空く
- 肥満により皮膚同士が密着する部位がある
汗をかくこと自体は体温調節に必要な生理現象です。予防のポイントは汗をかかないことではなく、かいた汗を皮膚に残さないことにあります。
汗疹(あせも)の種類
汗疹は、汗管が詰まる深さによって3つのタイプに分けられます。見た目や症状が異なるため、どのタイプかによって対応も変わります。
| 種類 | 詰まる深さ | 見た目 | かゆみ | 頻度 |
| 水晶様汗疹 | 角層(皮膚のごく浅い部分) | 透明で小さな水ぶくれが多数 | ほとんどなし | 発熱後や日焼け後に見られる |
| 紅色汗疹 | 表皮内(やや深い部分) | 赤くて小さなブツブツ | かゆみやチクチクする痛み | 最も多いタイプ |
| 深在性汗疹 | 真皮上層(さらに深い部分) | 白っぽく扁平な盛り上がり | ほとんどなし | まれ。高温環境が続く場合など |
水晶様汗疹(白いあせも)
角層のごく浅い部分で汗管が詰まって起こるタイプです。直径1〜3mm程度の透明な水ぶくれが、赤みを伴わずに多数現れます。かゆみや痛みはほとんどなく、数日で自然に乾いて治まることが多いとされています。
高熱が出た後や、強い日焼けの後、長時間の発汗の後に見られることがあります。特別な治療を必要としないことが多いタイプです。
紅色汗疹(赤いあせも)
一般に「あせも」と呼ばれるのは、この紅色汗疹です。表皮内で汗管が詰まり、漏れた汗が炎症を起こすため、赤く小さなブツブツができ、かゆみやチクチクとした刺激感を伴います。
かゆみのためにかき壊しやすく、そこから細菌が入り込んで悪化することがあります。赤みが強い、かゆみが強い、範囲が広がっているという場合は、早めに皮膚科でご相談ください。
深在性汗疹
真皮の浅い層で汗管が詰まるタイプで、日本ではまれです。白っぽく扁平に盛り上がった発疹が現れ、かゆみはほとんどありません。高温多湿の環境で紅色汗疹を繰り返した後に生じることがあるとされ、その部分では汗が出にくくなるため、体温調節に影響することもあります。
汗疹と間違えやすい皮膚疾患
「あせもだと思っていたら違った」というケースは少なくありません。見た目が似ている疾患を整理しておきます。
| 疾患 | 特徴 | 汗疹との違い |
| 汗かぶれ(汗による刺激性接触皮膚炎) | 汗の成分が皮膚を刺激して起こる湿疹。赤み、かゆみ、皮むけ | 汗管の詰まりではなく、汗の刺激が原因。境界がはっきりしない赤みになりやすい |
| とびひ(伝染性膿痂疹) | 細菌感染により水ぶくれやかさぶたができ、接触で広がる | かき壊した汗疹から発展することがある。うつる点が大きな違い |
| あせものより(多発性汗腺膿瘍) | 汗腺に細菌感染が及び、赤く腫れて痛むしこりになる | 乳幼児に多い。痛みと腫れを伴う |
| 接触皮膚炎(かぶれ) | 化粧品、金属、植物などが触れた部位に一致して赤みとかゆみ | 原因が触れた範囲に一致する |
| アトピー性皮膚炎 | 左右対称に繰り返す湿疹。乾燥を伴う | 慢性的に繰り返す。汗で悪化することがある |
| カンジダ症、白癬 | 真菌(カビ)による感染。じくじくした赤みや皮むけ | 抗真菌薬が必要で、ステロイドだけでは悪化することがある |
注意したいのは、真菌感染にステロイド外用薬を使うと悪化することがあるという点です。市販薬で改善しない場合や、範囲が広がっていく場合は、自己判断を続けずに皮膚科で確認してください。
汗疹(あせも)の治療
基本は皮膚を清潔に保つこと
軽い汗疹であれば、汗をこまめに流し、風通しをよくすることで自然に軽快することが多いとされています。
- 汗をかいたらシャワーで流す、または濡れタオルで押さえるように拭き取る
- 石けんは低刺激のものを使い、こすらずに泡でやさしく洗う
- 洗った後は水分をよく拭き取り、蒸れを残さない
- 必要に応じて保湿する(皮膚のバリア機能を保つため)
ゴシゴシこすることは逆効果です。摩擦が炎症を強めるため、押さえるように拭くことを意識してください。
外用薬による治療
赤みやかゆみが強い紅色汗疹では、炎症を抑えるためにステロイド外用薬が用いられることがあります。
- 強さのランクや基剤(軟膏・クリーム・ローション)は、部位、年齢、症状の程度に応じて選択されます
- 顔や首など皮膚の薄い部位には、弱めのランクが選ばれることが一般的です
- 自己判断で強い薬を長期間使い続けることは避けてください
細菌感染を伴っている場合には抗菌薬、真菌感染が疑われる場合には抗真菌薬が必要になります。見た目が似ていても必要な薬が異なるため、改善しないまま同じ薬を使い続けないことが重要です。
内服薬による治療
かゆみが強く、かき壊しにつながっている場合には、抗ヒスタミン薬の内服を併用することがあります。細菌感染が広がっている場合には、抗菌薬の内服が検討されます。
薬の選択や使用期間は症状によって異なるため、用法用量は医師・薬剤師の指示に従ってください。
汗疹で皮膚科を受診する目安
次のような場合は、医療機関でのご相談をおすすめします。
- かゆみが強く、眠れない、かき壊してしまう
- 1週間程度セルフケアを続けても改善しない
- 赤みや腫れが広がっている
- じくじくしている、膿を持っている、かさぶたができている
- 痛みを伴うしこりができている
- 発熱を伴っている
- 市販薬を使ったら悪化した
- 毎年同じ時期に繰り返している
- 乳幼児、高齢の方、糖尿病など感染しやすい持病がある方に生じた
とくに「じくじくする」「膿がある」「痛みがある」は、細菌感染のサインです。とびひは接触でうつるため、ご家族に小さなお子さんがいる場合は早めの受診をおすすめします。
東京センタークリニックは、日本橋駅から近い内科・皮膚科などの診療を行うクリニックで、汗疹をはじめとする皮膚のトラブルのご相談にも対応しています。
診察では、発疹の見た目と分布、症状が出た経過、汗をかく環境、使用した薬などを確認し、必要に応じて汗疹以外の疾患との鑑別を行います。
汗疹(あせも)の予防とセルフケア
汗を皮膚に残さない
- 汗をかいたら早めにシャワーを浴びる
- 外出先では、汗ふきシートや濡れタオルで押さえるように拭く
- 乾いたタオルで強くこすらない
- 汗をかいた衣類は早めに着替える
- 入浴後は水分をしっかり拭き取る
制汗剤を使う場合は、汗を止めることよりも、こまめに拭き取ることを優先してください。制汗剤の成分が汗管を塞ぐ方向に働くこともあるため、使いすぎには注意が必要です。
衣類と環境を整える
- 吸湿性、通気性のよい素材(綿など)を選ぶ
- 締めつけの強い下着やベルトを避ける
- 重ね着を減らし、汗を吸う下着を1枚はさむ
- エアコンや除湿機で室温と湿度を調整する
- 寝具も通気性のよいものを選び、寝汗の後は着替える
室温は28℃前後、湿度は70%以下を目安にすると、汗のかきすぎと蒸れの両方を抑えやすくなります。
皮膚のバリア機能を保つ
汗疹の予防というと洗うことに意識が向きがちですが、洗いすぎて皮膚が乾燥すると、バリア機能が低下して刺激に弱くなります。
- 1日に何度もシャワーを浴びる場合、石けんの使用は1〜2回にとどめる
- 入浴後は、べたつかないタイプの保湿剤で整える
- かゆみが出る前のケアを習慣にする
汗をかきにくい生活だけを目指さない
汗をかかない生活を続けると、汗腺の働きが鈍り、体温調節がしにくくなるとされています。適度に汗をかき、その都度きちんと流すというサイクルが、汗疹の予防と体温調節の両面から望ましいと考えられています。
汗疹(あせも)についてよくある質問
汗疹は何日くらいで治りますか?
水晶様汗疹(透明な水ぶくれ)は、数日で自然に乾いて治まることが多いとされています。紅色汗疹(赤いブツブツ)も、汗を残さないケアを続けることで1週間程度で軽快していくことが一般的です。2週間近く改善しない場合や、悪化している場合は、別の皮膚疾患の可能性も含めて皮膚科でご相談ください。
汗疹に市販薬を使ってもよいですか?
軽い症状であれば、市販のかゆみ止めや外用薬で様子を見ることも選択肢です。ただし、数日使用しても改善しない、かえって悪化したという場合は、使用を続けずに受診してください。真菌感染や細菌感染では、必要な薬が異なるためです。使用にあたっては、薬剤師にご相談のうえ用法用量を守ってください。
汗疹は人にうつりますか?
汗疹そのものは人にうつりません。ただし、かき壊した部分に細菌が感染して「とびひ(伝染性膿痂疹)」になった場合は、接触によって人にうつります。じくじくした部分やかさぶたがある場合は、タオルの共用を避け、早めに受診してください。
汗疹と汗かぶれはどう違いますか?
汗疹は、汗管が詰まって汗が皮膚の中に漏れることで起こるのに対し、汗かぶれは、皮膚に残った汗の成分が刺激となって起こる湿疹です。汗疹は小さなブツブツや水ぶくれが集まるのに対し、汗かぶれは境界のはっきりしない赤みとして広がる傾向があります。対処法が重なる部分も多いため、見分けがつかない場合は皮膚科でご相談ください。
大人でも汗疹になりますか?
なります。マスクの下、首、背中、下着やベルトの締めつけ部分など、汗がこもる部位であれば年齢を問わず発症します。通勤や外回りで汗をかいたまま長時間過ごす方、制服や作業着で通気性が確保しにくい方は、とくに注意が必要です。
汗疹の跡は残りますか?
汗疹そのものは、炎症が治まれば跡を残さずに回復することが多いとされています。ただし、かき壊して深い傷になった場合や、細菌感染を起こした場合には、色素沈着や跡が残ることがあります。かゆみを我慢せず、早い段階で炎症を抑えることが、跡を残さないためのポイントです。
赤ちゃんの汗疹はどう対応すればよいですか?
赤ちゃんは汗腺の密度が高く、体温も高いため、汗疹ができやすいとされています。こまめな着替え、汗を流す、室温と湿度の調整が基本です。乳幼児では、汗腺に細菌感染が及ぶ「あせものより(多発性汗腺膿瘍)」を起こすことがあるため、赤く腫れて痛みを伴うしこりが見られる場合は、早めに医療機関を受診してください。