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「低身長は遺伝のせい?」親のせいと悩む前に知っておきたい小児成長外来のこと

クラスで背の順が一番前、同級生より一回り小さい、お子さんの身長について、ふと心配になる瞬間は多いものです。「低身長」「遺伝」と検索すると、「親が小さいと子も小さい」「遺伝子で決まる」といった言葉が目に入り、不安になる保護者の方も少なくありません。
しかし、低身長=遺伝と一言で片づけられるものではありません。実際には、体質や成長のタイミング、ホルモン分泌や病気など、さまざまな要因が関係します。
「低身長と遺伝」について、親として気になる疑問をひとつずつ整理しながら、必要に応じて医師に相談するきっかけをお伝えします。

「うちの子、低身長かも?」親が最初に感じること

子どもの成長を毎日見ているからこそ、少しの変化にも敏感になるのが親心です。
「背が低いのはうちの子だけ?」「もしかして病気?」そのような不安が芽生えるとき、まず知っておきたいことがあります。低身長の原因には、遺伝や家族性など体質的なものの他に、病気によるものなどさまざまです。
また、低身長かどうかは成長曲線で判断し、原因を特定するには医師の診断が必要です。

低身長症の基準について

低身長症とは、単に平均より小さいというだけでなく、成長のスピードや身長の位置が目安より大きく下回っている場合を指します。具体的には、同年齢・同性の平均身長より2標準偏差(約2SD)以下のときが医学的な基準です。この評価に成長曲線を用います。
ただし、単純に数値だけで判断できるわけではなく、身長の伸び方(成長スピード)がゆっくりな場合も低身長症として考慮されることがあります。まずは基準を知ることで、不安を整理しやすくなります。

成長曲線についてくわしくはこちら

平均より身長が低いのは低身長症か?心配しなくて大丈夫?

成長には個人差があり、特に小さいうちは同じ学年でも生まれ月によって12ヶ月もの違いがあるため、10cm以上の身長差があるのは当然のことです。とはいえ、長く続く「小柄さ」に気づいたとき、多くの親御さんが「低身長症なのでは?」と不安を抱きます。
外見的な特徴や顔つきで判断できる場合もありますが、専門的な検査を受けなければ正確な原因は分かりません。焦らず、今どのようなペースで成長しているのかを冷静に見ることが大切です。

顔つきや体つきに現れるサインとは?

低身長症の一部で特徴的な顔つきや体型が見られるケースがあります。たとえば、顔がやや幼く見える、手足が短く感じる、体全体が小ぶりにまとまっているなどです。もちろん、これらはあくまで一例であり、決して「特徴がある=病気」というわけではありません。
ただし、「ほかの子より明らかに体つきが違う」と感じる場合は、医師による評価で成長の仕組みを調べることができます。見た目の印象だけにとらわれず、気になる変化を早めに確認することが大切です。

遺伝は低身長にどれくらい関係するのか

遺伝による低身長の心配をされる人も多くいます。「私が小さいから仕方ないのかも…」「夫婦そろって小柄だから」そのように自分を責めてしまう親御さんは少なくありません。でも、身長は遺伝だけでは決まりません。環境や成長のタイミングにも大きく左右されます。

低身長は遺伝だけでは決まらない

確かに、身長には遺伝的な影響があり、親の身長をもとにした「予測身長」という目安もあります。しかし、これはあくまで傾向にすぎません。生活環境や栄養、睡眠、ホルモン分泌の状態によって、親より高くなることも低くなることもあります。

「母親が小さいと子どもも小さい」は本当か?

よく耳にするこの言葉には、半分だけ真実があります。確かに、母親の身長が遺伝に影響する割合は高いとされていますが、それがすべてではありません。父親の体格、そして子ども自身の健康状態や生活リズムも深く関わります
実際に予測身長では、母親だけでなく両親の身長から子供の最終的な身長の目安を計算するものです。この計算式は、両親の身長から子供の最終身長の遺伝的な可能性を予測するものであることから「遺伝計算」と呼ばれることがあります。
「母親が小さい=子どもも低身長になる」と決めつけてしまうと、親が必要以上に自分を責めてしまうこともあり得ます。身長は家族みんなで作られるバランスと考え、焦らず見守ることが大切です。

「遺伝計算」で身長の目安を知るメリット

身長の遺伝的な傾向を知るための計算方法はいくつかあります。「遺伝計算」により「将来どのくらい伸びる可能性があるか」をざっくり把握できます。数値はあくまで目安ですが、成長のペースや変化を見守る参考になるため、心配しすぎる前に一度理解しておくと安心です。
この計算結果はあくまで目安であり、±7〜9cmの誤差が生じると考えられています。
正確な将来身長の予測には、医療機関でのレントゲン検査などが必要になります。

計算式とその意味

男の子の予測身長女の子の予測身長
計算式(父親の身長 + 母親の身長 + 13) ÷ 2(父親の身長 + 母親の身長 – 13) ÷ 2
この計算式の「+13」や「-13」は、男女間の平均的な身長差を考慮したものです。

低身長のタイプについて

うちの子の低身長は体質なのか? それとも何か病気が関係しているのか?お子さんに対する心配はつきないことでしょう。身長が低いと一口に言っても、その中身にはさまざまなパターンがあります。

遺伝的な家族性低身長と医学的な理由による低身長のちがい

身長が低い原因は、大きく分けて二つあります。ひとつは「家族性低身長」と呼ばれるタイプで、遺伝的に小柄な体質が受け継がれている場合です。もうひとつは、ホルモンや遺伝子の異常、慢性的な病気など、「医学的な理由による低身長」です。
医学的な理由による低身長は、成長ホルモンの分泌不足、染色体異常、骨の病気など、何らかの病気や疾患が原因で低身長となっている状態です。早期発見が重要で、成長曲線からの著しい逸脱や、家族性低身長とは異なる特異的な所見がある場合は、病気の可能性を考慮するべきです。

親からの遺伝と決めつけず、身長のためにできること

子どもの低身長に気づくと、「自分のせい…?」と悩む親御さんも少なくありません。子どもの身長は親の身長や育て方だけで決まるわけではないことを理解することが大切です。必要以上に心配することなく、食生活、睡眠、運動などの生活習慣を整える方がお子さんの成長によい影響を与えることでしょう。

母親・父親だけが低身長の原因ではない

低身長の原因が「親のせい」というのは、遺伝的な要素が強い家族性低身長や体質性低身長のことを指す可能性がありますが、すべての低身長が遺伝によるものではなく、ホルモンや骨の病気、栄養、慢性疾患などの可能性もあります。「親が小さい=子どもも小さい」と考えすぎず、家族全体のバランスで捉えることが大切です。

小児成長外来を受診してみよう

小児成長外来は、身長の伸び方や体質、遺伝的要素を総合的に評価してくれる専門窓口です。

受診を考える低身長の目安

成長曲線を記録し、子どもの身長が、同性・同年齢の子どもの平均線から大きく外れている、または伸び悩んでいる場合は、専門外来への相談を検討しましょう。
以下のような場合は、小児科や小児成長外来の早めの受診が推奨されます。

☑身長が同年齢・同性の平均より極端に低い
☑成長スピードが著しく遅い
☑家族性低身長かどうか判断が難しい

低身長と遺伝に関するよくある質問

Q. 親の身長が低いと子どもは必ず小さいですか?

必ずしもそうではありません。隔世遺伝や体質の影響もあり、子どもが予想より高くなることもあります。

Q. 小児成長外来はどのタイミングで受診すればいいですか?

 平均より極端に小さい場合、成長スピードが遅い場合、あるいは遺伝による家族性の低身長かどうか判断が難しい場合は早めに相談すると安心です。

まとめ

低身長は「遺伝」「体質」「環境」など、さまざまな要素が絡み合って決まります。親の身長や育て方だけが原因ではないことがほとんどで、「自分のせいかも」と悩む必要はありません。子ども一人ひとりの成長パターンを理解し、焦らず見守ることが大切です。
小児成長外来を受診すると、身長の伸び方や体質の特徴を専門的に評価してもらえます。早めの相談は親子の安心につながります。
日々の生活習慣や成長の記録も、子どもを支える重要な方法です。栄養、睡眠、運動などの基本を整えることで、身長の伸びをサポートする土台を作れます。親ができる簡単なサポートでも、子どもにとって大きな助けとなります。焦らず見守り、必要なときに医師と相談することで、子どもも親も安心できる環境を作れます。低身長を過度に心配するのではなく、情報を整理して理解し、適切なサポートを行うことが何より大切です。