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小学生が筋トレをすると身長が伸びなくなるのは本当?嘘?

「うちの子、背はあまり伸びていないようだけど、筋肉をつけたらいいのかな?」「筋トレをしたら身長が伸びにくくなるって聞いたけど本当?」小学生の筋トレについて不安をお持ちの親御さんもいらっしゃることでしょう。小学生期は、身長も筋肉もぐんぐん速度をあげて発達していく時期です。

大事な小学生の時期に「身長と筋肉はどう関係しているか」身長や筋肉のために家庭でできる支援策についてご紹介します。

筋肉と身長はどのようにつながっているのか?

背が伸びることと筋肉が育つことは、体の中でしっかりつながっているチームのようなものです。

子どもの体は、骨が伸びることで背が高くなります。そして骨が長くなると、それに合わせて筋肉も自然と増えていきます。つまり「背が伸びるから筋肉もつきやすくなる」という流れがあるのです。

実は背が伸びると筋肉も育ちやすい

骨が伸びて身長が高くなると、それに合わせて筋肉も自然に増えていきます。

研究でも「背が伸びる → 筋肉がつく」という関係がしっかり確認されています。ポイントは「背が伸びること自体が、筋肉を育てる土台になる」ということです。

成長期には「成長ホルモン」や「性ホルモン(テストステロン・エストロゲン)」が増えます。

成長ホルモンは、骨を伸ばし、性ホルモンは、骨密度を高め、筋肉の発達もサポートします。

このように、ホルモンの働きによって「身長が伸びる」と「筋肉が育つ」が同じ時期に進むしくみになっています。

フェーズ骨(身長)筋肉(筋量)関係性
小学校低学年
ゆるやか成長期
少しずつ骨が伸びる筋肉もゆるやかに増える骨と筋肉が並んで育つ
小学校高学年成長スパート期背が急に伸びる筋肉も急に育ちやすくなる骨の伸びが筋肉の成長を後押しする
中学生思春期以降ホルモンの影響が強くなる筋肥大も起こりやすい骨と筋肉の成長が加速する最終段階

出典:J-STAGE 身体の発育と発達

小学生で筋トレをすると身長が伸びなくなる?

「筋トレをすると背が伸びなくなるのでは?」という疑問はよく聞かれますが、最近の研究や学会見解では、それを強く支持する証拠は見つかっていません。むしろ、安全に設計された筋力トレーニングは、成長を妨げないどころか、体を整える助けになる可能性が示されています。

「筋トレをすると身長が伸びなくなる」について最近の研究や学会での見解は以下のとおりです。

  • 適切に行えば、筋トレが身長の伸びを妨げる証拠はない
  • 小学生のうちは筋肉がムキムキになるのではなく「体の使い方がうまくなる」ことが中心
  • アメリカ小児科学会 (AAP) の論文*によると、思春期前の子どもは、筋力を高める際には主に「神経系(筋肉をうまく動かすしくみ)」の適応によるもので、筋肉そのものがすぐ大きくなるわけではない
  • 適切に管理された抵抗運動(軽めの負荷、正しいフォーム、無理しない頻度)は安全である
  • 長期における骨・筋肉・体組成の変化は、遺伝・栄養・ホルモン・活動レベルなど多くの因子が関わって決まるものであり、単に運動だけで身長を止めてしまうような単純な因果関係は認められていない

出典:アメリカ小児科学会 (AAP) *

筋トレのときに注意したいポイント

筋トレはやり方を間違えるとケガや成長への悪影響につながることがあります。無理なトレーニングは避けましょう。成長期の骨はまだ完全に固まっていないため、特に注意が必要です。

やってよいトレーニング避けたいトレーニング
自重運動(スクワット・腕立て)大人用の重すぎるウエイト
遊び感覚の運動毎日の高強度トレーニング
週2〜3回くらいの軽い練習休みなく続ける
正しいフォームを教える痛みを我慢して続ける

小学生の筋トレと身長のためにできること

小学生の身長と筋肉の成長には、どのような支援が可能か、家庭でできる具体的な方法を見ていきましょう。

運動・運動習慣を支える

小学生の成長において運動・運動習慣は、身体の丈夫さや体力向上はもちろん、精神的な成長、集中力や学習意欲の向上、生涯にわたる健康習慣の基盤作りと多岐にわたり重要です。運動は骨や筋肉の強化、心肺機能の向上につながるだけでなく、ストレス軽減や自己肯定感を高め、友達との協調性や社会性を育むといった精神面への良い影響も大きいです。筋トレを含めた運動・運動習慣の具体的な方法やポイントは以下のとおりです。

  • 多様な運動を行う

 ジャンプ、ランニング、体操、ボール運動、縄跳び、体幹運動(プランクなど軽めの負荷)など、子どもが楽しめる動きを取り入れることが有効です。骨・筋肉・神経系に刺激を与え、発育を促す役割があります。

  • 軽めの負荷を使った抵抗運動(自重トレーニング)

 腕立て伏せ、スクワット(自重)、懸垂(補助あり)など、自分の体重を使ったトレーニングを取り入れることは比較的安全性が高く、身長や筋肉の成長に有効です。

  • 筋トレは適切な頻度・強度で行う

無理のない頻度(たとえば週2〜3回など)、軽めの負荷、正しいフォーム、休息を確保することが大切です。高頻度や高強度を連続で行うことは避けたほうがよいでしょう。

  • 筋トレを含めた運動では、監督・指導を重視する

正しいフォームを教えてあげる、怪我のリスクを意識する、安全な環境(良いマット、整った場所)で行う、疲れや痛みが出たら中止するといった配慮が必要です。

食事・栄養管理

小学生の「身長と筋肉の成長」にとって食事や栄養管理は、成長に必要なタンパク質、カルシウム、鉄分、ビタミン類などの栄養素をバランスよく摂取し、健康的な体の土台を作るために極めて重要です。成長ホルモンの分泌を助け、骨の成長と筋肉の形成を促進するためには、毎日の食事での栄養管理が不可欠であり、単なるエネルギー補給だけでなく、未来を形作るための重要な要素となります。

  • 十分なたんぱく質

肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など、良質なたんぱく質をバランスよく取ることが重要です。

  • カルシウム・ビタミンD

骨のミネラル形成に関わるため、牛乳・乳製品、小魚、緑黄色野菜などの食品を積極的に摂り、日光を使ってのビタミンD生成も意識した生活習慣を身につけましょう。

  • 満遍なく栄養素を摂取

鉄、亜鉛、マグネシウム、ビタミンC、ビタミンK なども骨・筋肉にとって重要です。

  • 3食しっかり摂る

朝・昼・夕の食事をきちんと摂ることで、必要な栄養素をまんべんなく摂取できます。

  • エネルギー(カロリー)を確保

成長期の子供は基礎代謝が高く、多くのエネルギーと栄養素を必要とします。無理な制限食や過度なダイエットは避けましょう。食事量が極端に少ないと、身長の伸びが鈍くなることがあります。

適度な運動で骨への刺激を与えることは重要ですが、過度な筋力トレーニングは成長に必要なエネルギーを奪ってしまう可能性があるため注意が必要です。

  • 睡眠・休息の確保

成長ホルモンは睡眠中、特に深い眠りに入っているときに最も多く分泌されるため、十分な睡眠を取ることは成長期の子どもにとって重要な要素となります。 逆に、睡眠不足になると成長ホルモンの分泌が十分におこなわれず、骨の成長が抑制されて身長が伸びにくくなる可能性があります。

定期的な観察・相談

小学生の高学年になる9歳から12歳ごろは運動能力が上がり、その後12〜14歳ごろは身長が伸びやすい時期(ゴールデンエイジ)と呼ばれ、この時期の食事、睡眠、運動が発育に大きく関わります。

身長のチェックを行い、成長の遅れが気になる場合は、医師に相談することも検討しましょう。

  • 成長記録「成長スパート」を見逃さないために

身長・体重・体格についての成長記録を定期的につけておくと成長度合いとともに、成長スパートと呼ばれる「身長が急激に伸びる時期」を把握しやすくなります。特に思春期の成長スパートでは、女子で約8cm、男子で約10〜12cmも身長が伸びる場合があり、この時期の生活習慣や栄養状態が最終身長に大きく影響すると言われています。

参考:文部科学省_女性のスポーツ参加促進事業

  • 小児成長外来への相談が必要な場合

成長の落ち込みや「いつもより伸びが少ない」と感じたら、医師へ相談してみましょう。必要に応じては医師の指示で数か月ごとの詳細チェックを行います。以下のようなときは、早めに当院に相談してください。

  • 成長曲線が年をまたいで下がり、または成長度合いが著しく低い
  • これまでの成長曲線から急に下方へ外れる
  • 年齢に比して成長速度が明らかに遅い
  • 思春期の徴候が平均より2〜3年早く現れる(思春期早発の疑い)あるいは極端に遅い(思春期のズレは成人身長に影響するため注意)。
  • 体重の増え方やエネルギー、食欲、慢性の病気(消化器症状、頻回の感染など)があり、全身の発育に影響を与えている様子がある
  • 運動部活動とのバランス、オーバーワークになっていないかの確認

適度な運動は骨や筋肉の発達を助ける成長ホルモンの分泌を促進し、食欲増進にも繋がりますが、過度な負荷は骨の成長を妨げたり、スポーツ障害を引き起こすリスクがあります。そのため、子供の体調を考慮し、十分な休息とバランスの取れた運動を心がけることが大切です。

小学生の筋トレと身長に関するよくある質問

Q.小学生の筋トレは、身長が伸びにくくなるため厳禁ですか?

身長が伸びないと言われたのは昔のことで、現時点では、適切な指導・監督のもとで行われたトレーニングが身長の伸びを妨げたという証拠はなく、むしろ安全性を確保すればメリットがあるという見解が主流です。

Q.筋トレをやったら筋肉がすぐにつきますか?

小学生の段階では、筋肥大(筋肉が太くなる)よりもむしろ「神経系の適応(筋肉をより効率よく使えるようになる変化)」が主な要因で筋力が向上するという考え方が一般的です。

Q.小学生のうちは、どのくらいの運動・トレーニングが適切ですか?

一般には、「1日あたり合計で60分程度の運動を行う」という目安(たとえば文部科学省のスポーツ・健康関連の指導方針など)を参考に、遊びも含めた運動習慣をつけることが推奨されます。

参考:文部科学省_女性のスポーツ参加促進事業

Q.小学生の筋トレが筋肉や身長に負担になってしまう危険はありますか?

過度な負荷、誤ったフォーム、過度な回数・頻度、休息不足などは、関節や骨端線に負荷をかける可能性があるため注意が必要です。痛みや違和感があればすぐ中止し、医師に相談してください。

まとめ

子どもにとって大切なのは、楽しみながら体を動かすこと、バランスある生活、無理をしないこと、そして定期的に観察しつつ必要なら専門家の助言を仰ぐことです。身長(骨の成長)と筋肉(筋量・筋力)はお互いに関連しつつも、無理なトレーニングで成長を阻害しないように気をつけてあげたいものです。

小学生の身長と筋肉については、以下の2つを知っておくと安心です。

  • 背が伸びると筋肉も自然と育ちやすい
  • 小学生のうちに正しく運動すれば、筋トレが身長の成長を止めることはない

大事なのは無理をしないことと正しいやり方で楽しく運動することです。