家族が胃腸炎になり、自分や子どもにうつらないか心配になっていませんか。
胃腸炎はウイルスや細菌が原因の場合、人にうつることがあり、症状が治まった後もしばらくは注意が必要です。
とくにノロウイルスは感染力が強く、嘔吐物の処理や消毒の方法を誤ると、家族内で次々と広がってしまうことがあります。
この記事では、うつる胃腸炎とうつらない胃腸炎の違い、感染経路、潜伏期間といつまでうつるか、家族への予防策、仕事や学校の考え方について解説します。
流行期を落ち着いて乗り切るための手がかりにしてください。
胃腸炎はうつるのか
「胃腸炎ってうつるの?」と不安になるのは自然なことです。
結論からお伝えすると、胃腸炎がうつるかどうかは原因によって異なります。
胃腸炎は、胃や腸に炎症が起き、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛・発熱などが出る状態を指します。
このうちウイルスや細菌などの感染が原因のものは感染性胃腸炎と呼ばれ、人にうつることがあります。
うつる胃腸炎とうつらない胃腸炎
同じ「胃腸炎」でも、原因によってうつるかどうかが分かれます。
- うつることがある胃腸炎:ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどのウイルスや、細菌が原因の感染性胃腸炎
- うつらない胃腸炎:ストレス、薬の副作用、暴飲暴食、アルコールのとりすぎなど、感染以外が原因のもの
つまり、人にうつるのは原因となる病原体であり、胃腸炎という診断名そのものではありません。
家族が同じ時期に似た症状を出している場合は、感染性胃腸炎の可能性を考えて対策をとるのが安心です。
ウイルス性と細菌性でのうつりやすさの違い
感染性胃腸炎は、大きくウイルス性と細菌性に分けられます。うつりやすさの傾向を整理しました。
| 原因の種類 | 主な病原体 | 人から人へのうつりやすさの傾向 |
|---|---|---|
| ウイルス性 | ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなど | 便や嘔吐物を介して人から人へ広がりやすい |
| 細菌性 | カンピロバクター、サルモネラなど | 食べ物由来が中心で、人から人へはうつりにくいものもある |
| 細菌性(一部) | 腸管出血性大腸菌など | 少量でもうつることがあり注意が必要 |
細菌性の多くは、いわゆる食中毒として加熱不足の肉や卵などから感染するとされています。
一方で、冬に家族内で広がりやすいのはウイルス性、とくにノロウイルスです。どちらの場合も、便や嘔吐物の扱いに気をつけることが基本になります。
胃腸炎がうつる感染経路
どこからうつるのかを知っておくと、対策のポイントが見えてきます。
感染性胃腸炎の多くは、ウイルスや細菌が口から体内に入ることで感染するとされています。主な経路は次の3つです。
手や物を介した接触感染
代表的なのが、ウイルスが付いた手で口に触れることによる感染です。
- トイレのドアノブや便座、水洗レバー
- 蛇口、手すり、照明のスイッチ
- 共用のタオルや食器
こうした場所に付いたウイルスが手を介して口に入ります。
なかでもノロウイルスは、10〜100個程度のごく少量でも感染が成立することがあるとされ、わずかな付着でもうつる可能性があります。
嘔吐物の飛沫と乾燥後の塵埃感染
嘔吐物は、半径2m程度の範囲まで細かなしぶきが飛び散ることがあるとされています。そのしぶきを吸い込んだり、口に入ったりすることで感染します。
さらに注意したいのが塵埃(じんあい)感染です。
嘔吐物や便が乾燥すると、含まれていたウイルスがほこりと一緒に空気中に舞い上がり、それを吸い込むことでうつることがあります。
「胃腸炎は空気感染するの?」という疑問が多いのはこのためです。嘔吐物や便はできるだけ早く、正しい方法で処理することが感染拡大を防ぐ鍵になります。
食品や水を介した感染
食べ物を通じてうつることもあります。
- 加熱が不十分なカキなどの二枚貝(ノロウイルス)
- 感染している人が調理した料理
- 加熱不足の鶏肉や生卵など(カンピロバクター、サルモネラなど)
症状のある人が家族の食事を作ると、料理を通じて広がるおそれがあります。
胃腸炎の潜伏期間といつまでうつるか
「いつ症状が出るのか」「いつまで気をつければいいのか」は、多くの方が気になる点です。
原因別の潜伏期間の目安
潜伏期間とは、ウイルスや細菌が体内に入ってから症状が出るまでの期間です。原因ごとの目安は次のとおりです。
| 病原体 | 潜伏期間の目安 |
|---|---|
| ノロウイルス | 1〜2日程度 |
| ロタウイルス | 2日前後 |
| 腸管アデノウイルス | 3〜10日程度 |
| カンピロバクター | 2〜7日程度 |
| サルモネラ | 6時間〜3日程度 |
ウイルス性の胃腸炎は、家族が発症してから1〜3日ほどの間に別の家族が発症するという流れが多く見られます。
いずれも目安であり、体調や感染した量によって前後することがあります。
症状が出ている間が最もうつりやすい
もっとも感染力が強いとされるのは、嘔吐や下痢が続いている時期です。
この時期の便や嘔吐物には大量のウイルスが含まれており、ノロウイルスでは便や嘔吐物1gあたり100万〜10億個程度のウイルスが含まれるとされています。
また、症状が軽い場合や、感染しても症状が出ない場合(不顕性感染)でも、便にウイルスが出ていてうつすことがあります。「軽いから大丈夫」と油断しないことが大切です。
症状が治まった後もうつる期間
見落としやすいのが、症状が治まった後の期間です。
ノロウイルスの場合、症状が落ち着いた後も便の中にウイルスが排出され、通常は1週間程度、長いときには1か月程度続くことがあるとされています。ロタウイルスなども、しばらく便中に排出が続くことがあります。
そのため、元気になってからも次のような対策を続けましょう。
- トイレの後と食事の前の手洗いを徹底する
- トイレの便座やレバー、ドアノブをこまめに消毒する
- しばらくは家族の調理を控える
なお、ノロウイルスには多くの型があり、一度かかっても別の型に繰り返し感染することがあるとされています。
家族に胃腸炎をうつさないための対策
家庭内での感染拡大を防ぐには、手洗い・消毒・汚物処理の3つが柱になります。
手洗いと消毒の基本
手洗いは石けんと流水で30秒程度、指の間や爪の先、手首まで丁寧に洗います。トイレの後、調理や食事の前、看病の後は必ず洗いましょう。
注意したいのは、ノロウイルスにはアルコール消毒が効きにくいとされる点です。
物や環境の消毒には、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用の塩素系漂白剤)を薄めて使うのが基本とされています。
| 用途 | 濃度の目安 | 作り方の例(塩素濃度約5%の製品の場合) |
|---|---|---|
| 嘔吐物・便の処理 | 0.1% | 水1Lに約20mL |
| ドアノブ・便座・手すりなど | 0.02% | 水1Lに約4mL |
製品によって濃度が異なるため、ラベルの表示を確認して調整してください。
金属は腐食することがあるため、消毒後に水拭きをします。消毒液は手指や体には使わず、作り置きせずにその都度用意しましょう。
嘔吐物や便の処理手順
嘔吐物の処理は、もっとも感染しやすい場面のひとつです。次の手順で行いましょう。
1. 窓を開けて換気し、処理する人以外は近づかないようにする2. 使い捨ての手袋・マスク・エプロンを着ける3. ペーパータオルで外側から内側に向かって、静かに拭き取る4. 拭き取ったものはビニール袋に入れ、0.1%の消毒液を注いで口を縛る5. 汚れた床は0.1%の消毒液を含ませたペーパーで覆うように拭き、10分程度おいてから水拭きする6. 手袋・エプロンを外して袋に入れて捨て、石けんで手を洗う
汚れた衣類やシーツは、付着物を静かに取り除いてから、0.02%程度の消毒液につけるか、85℃以上の熱水で1分以上処理してから、ほかの洗濯物とは分けて洗うと安心です。
東京センタークリニックは、日本橋駅から近い内科・皮膚科などの診療を行うクリニックで、胃腸炎の相談にも対応しています。
タオル・入浴・調理で気をつけたいこと
日常の過ごし方でも、うつるリスクを減らせます。
- タオルは共有せず、ペーパータオルや個人専用のものを使う
- 入浴は症状のある人を最後にするか、シャワーで済ませる
- 症状のある人や治ったばかりの人は、家族の調理を控える
- トイレは使用後にふたを閉めてから流す
- 看病する人をできるだけ1人に決める
浴槽のお湯を共有すると、お尻についたウイルスがお湯を介してうつることがあるため、入浴の順番も意識してください。
胃腸炎のとき仕事や学校はいつから行けるか
「いつから行っていいのか」は、学校と職場で考え方が少し異なります。
学校や保育園の場合
感染性胃腸炎は、インフルエンザのように一律の出席停止期間が定められているわけではありません。
学校保健安全法では第三種の「その他の感染症」にあたり、流行の状況などに応じて、学校医の意見を聞いたうえで学校長の判断により出席停止となることがあります。
登校・登園の判断は症状の状態や医師の判断、学校・園の規定によりますが、一般的な目安は嘔吐や下痢が治まり、普段の食事がとれるようになってからです。
保育園や幼稚園では、登園届や医師の意見書の提出を求められる場合もあるため、事前に確認しておくとスムーズです。
仕事の場合と食品を扱う仕事の注意点
仕事についても、法律で一律に休む期間が決められているわけではなく、症状の程度や職場の規定によって判断されます。
症状が治まってから出勤する場合も、しばらくは便にウイルスが出ている可能性があるため、トイレ後の手洗いを徹底しましょう。
とくに注意が必要なのは、次のような仕事です。
- 飲食店や給食など、食品を扱う仕事
- 医療機関や介護施設など、体の弱い方と接する仕事
- 保育の仕事
食品を扱う仕事では、職場の衛生管理ルールにより、検便でウイルスがないことを確認するまで調理業務を控えるよう求められることがあります。自己判断で復帰せず、職場に相談してください。
胃腸炎がうつりやすい時期と注意したい人
胃腸炎は一年中みられますが、原因によって流行しやすい時期があります。
- ノロウイルス:11月から2月頃の冬に流行しやすい
- ロタウイルス:冬の終わりから春にかけて、乳幼児を中心に流行しやすい
- 細菌性(食中毒):気温と湿度が高い夏場に多い傾向
なかでも11月から2月はノロウイルスの流行期にあたり、家庭や学校、職場での集団感染が起こりやすい時期です。
また、乳幼児や高齢者、持病のある方は、脱水が進みやすく重くなることがあるとされています。保育園や高齢者施設では集団感染にも注意が必要です。
胃腸炎で医療機関を受診する目安
感染性胃腸炎の多くは数日で軽快に向かうとされていますが、次のような場合は早めに受診してください。
| 症状 | 対応の目安 |
|---|---|
| 水分がとれない、飲んでも吐いてしまう | 速やかに受診する |
| 尿が出ない、極端に少ない | 速やかに受診する |
| 血便が出る | 速やかに受診する |
| 強い腹痛が続く | 速やかに受診する |
| 高熱が続く | 速やかに受診する |
| ぐったりしている、意識がぼんやりする | 速やかに受診する(反応が乏しいときは救急要請も検討) |
治療は水分補給を中心とした対症療法が基本で、下痢止めは原因を体の外に出す働きを妨げることがあるため、自己判断で使わないようにしましょう。
乳幼児や高齢者は、涙が出ない、おむつが濡れない、口の中が乾いているといった脱水のサインにも気を配ってください。
まとめ
胃腸炎がうつるかどうかについてのポイントは、次のとおりです。
- ウイルスや細菌による感染性胃腸炎はうつることがある。ストレスや薬が原因のものはうつらない
- 主な感染経路は手や物を介した接触感染、嘔吐物の飛沫や乾燥後の塵埃感染、食品
- ノロウイルスの潜伏期間は1〜2日程度とされる
- ノロウイルスは症状が治まった後も通常1週間程度、長いと1か月程度、便にウイルスが出ることがある
- ノロウイルスにはアルコールが効きにくく、次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が基本
- 仕事や学校は一律の基準ではなく、症状や医師の判断、職場や学校の規定で決まる
とくに11月から2月のノロウイルス流行期は、家族内での対策を早めに整えておきましょう。水分がとれないときや症状が長引くときは、自己判断せず医療機関にご相談ください。