小学生の時期は、成長のスピードが大きく変化する大切な時期です。学校生活や友達との中で「うちの子は背が低いのでは?」と気になる親御さんも少なくありません。
身長が伸びない原因、小学生の平均身長や学年別の伸びの目安とともに、小学生の身長がどのように伸びるのか、また身長を伸ばすために日常生活でできるサポートの方法までわかりやすく解説します。
小学生の身長に関する悩み

「同じ学年でも、周りの子と比べて背が低い」「成長が止まってしまったのでは?」「食べ物や運動で本当に身長は伸びるの?」
小学生になった子どもの身長に対して、こうした不安や悩みは大変自然なものです。でも心配しすぎる必要はありません。成長のペースは子どもによって違い、遺伝や生活習慣の影響を受けながら身長は伸びていきます。
身長が伸びるしくみ

子どもの背が伸びるのは、「成長ホルモン」 と 「骨の成長板(骨端線)」 「成長のスピード」が大きく関わっています。小学生の身長についての心配は、これらのポイントを確認していくことで少しずつ軽減されていきます。
成長ホルモンとは?

成長ホルモンは、脳の下の方にある「下垂体(かすいたい)」という部分から出るホルモンです。以下のような特徴があります。成長ホルモンによって寝ている間に背を伸ばすスイッチが入るので、夜の睡眠は非常に大切です。
- 夜ぐっすり眠っているときに多く成長ホルモンが分泌される
- 骨や筋肉を育てたり、体を回復させる働きがある
成長軟骨帯(骨端線・こったんせん)とは?

成長軟骨帯(骨端線)は、骨の両端にある「軟骨(なんこつ)」の部分のことで、ここで新しい細胞がどんどん作られて、骨が長くなります。
成長板とも呼ばれ、思春期を過ぎると次第に閉じてしまい、大人になると完全に閉じて成長が止まります。通常、レントゲンで手首の骨の骨端線を確認します。
小学生の成長スピード
小学生は「思春期前のゆるやかな成長期」にあたります。年間で約 5〜6cmくらい伸びるのが平均的です。ただし、同じ学年でも背の順の1番前の子と1番後ろの子では、10cm以上差があることもよくあります。
女の子は小学校高学年から、男の子は中学生くらいから、思春期の「ぐんと伸びる時期」がやってきます。
つまり、小学生のうちは「じわじわ、でも確実に」伸びていく時期です。急に背が伸びないからといって焦る必要はありません。
身長が伸びない小学生の特徴と原因

身長が伸びない子どもならではの特徴として、早熟の傾向が見られます。身長が伸びない原因として考えられるものの中でも比較的多いのが、この早熟によって身長が伸びないというケースです。小学校の低学年のうちに他の子どもと比べてずば抜けて身長が高いという場合は早熟の可能性があります。
早熟によって身長が伸びないのは、体が早く成熟することで骨の成長を促す「成長板」が早く閉じてしまうためです。初期には一時的に身長が急激に伸びることもありますが、成長期間が短縮されるため、最終的な成人身長は低身長になることがあります。
また、成長ホルモン分泌不全性低身長症の場合も、身長が低い、身長が伸びないといった症状がみられます。
小学生で成長が鈍いとき、以下のような医学的要因が隠れている場合があります。
- 成長ホルモン分泌不全
脳下垂体から分泌される成長ホルモンが不足
- 甲状腺機能低下症
代謝をつかさどるホルモンの不足が成長を妨げる
- 骨・軟骨の異常
骨端線の発育に影響する病気
- 染色体異常
ターナー症候群など、特定の遺伝的背景によるもの
- 慢性疾患(心臓病、腎疾患、消化器疾患など)
栄養吸収や代謝に影響する
「身長が伸びなくなった」と感じるときに確認すべきポイント

一般的に、小学生の身長は、年間で平均5〜6cm程度 伸びるとされています。ただし、伸び方には個人差があり、一時的に伸びが緩やかに見える時期があります。多くの小学生は、高学年5〜6年生になると伸びなくなったように感じやすい時期に差しかかります。成長のタイミングや、男の子であれば思春期(声変わりなど)、女の子であれば初潮の時期と重なり、生理的なもので心配のない場合がほとんどです。
ただし、遺伝や体質による個人差、あるいは病気などによって起こる場合があります。
確認すべきポイントは、以下の注意点を踏まえて、正しい方法で身長を継続的に測定し、成長のペースを把握することです。
生活、睡眠、運動習慣を見直し、必要に応じて医師の受診を検討しましょう。
- 身長測定の方法・頻度
年1回だけで判断せず、月単位での変化を見てみましょう。
- 標準偏差・年齢・性別別平均との比較
各学年・年齢での平均的な伸び幅を目安とし、大きく差があるか確認してみましょう。
- 「遺伝・体質」「個人差」の理解
成長の速度は個人差が大きいです。また、遺伝的な要素も大きく関わるので親の身長・家系性などの影響も考慮しましょう。
- 病気の影響
他の症状(疲れやすさ、食欲低下、発育遅延など)がないかチェックすることも重要です。
小学生の身長が伸びなくなる行動

小学生の身長の伸びを妨げる以下のような行動には、成長ホルモンの分泌を阻害したり、栄養不足を引き起こしたりして、身長の伸びに悪影響を与える可能性があります。
- 朝食を抜く・偏食や極端なダイエット
長時間空腹状態が続くと、身長の伸びに影響が出ることがあります。必要な栄養素が不足し、特にたんぱく質や鉄分、亜鉛、ビタミンDなどが不足すると成長に支障が出ます。
特に朝食には1日のエネルギーを確保する重要な役割があるため、身体の筋肉を作るたんぱく質が減って筋肉ができにくくなり低身長の原因を作る、ということが挙げられます。
- 睡眠不足
深い睡眠中に分泌される成長ホルモンが不足し、成長を妨げます。夜更かしや夜間のスマホやゲーム機の使用は、成長ホルモンの分泌リズムを乱すため注意が必要です。
- 運動不足
成長ホルモンは、運動中や運動後に多く分泌されます。適度な運動をしないと、成長ホルモンの分泌機会を失ってしまいます。
- ストレス
過度なストレスは、成長ホルモンの分泌を抑制する可能性があります。
- お菓子や清涼飲料の摂りすぎ
インスリン抵抗性を高め、成長に必要な栄養素の利用を妨げる可能性があります。
小学生の平均身長と成長の目安

我が子の身長は平均より大きいのか?小さいのか?この疑問を解決する方法は以下のとおりです。低身長や過度の身長差が心配なときは、小児成長外来で相談できます。
小学生の学年別の平均身長と比較する
まずは、子どもの年齢・学年に合わせた平均身長と比較してみましょう。男女差も考慮し、男児・女児別の平均を確認することが大切です。
| 小学校1年(6歳) | 小学校2年(7歳) | 小学校3年(8歳) | 小学校4年(9歳) | 小学校5年(10歳) | 小学校6年(11歳) | |
| 男児身長 (cm) | 116.7 | 122.6 | 128.5 | 134.0 | 139.7 | 146.0 |
| 女児身長(cm) | 115.8 | 121.8 | 127.7 | 134.1 | 141.1 | 147.8 |
小学生の成長曲線(SD値)を活用する
成長曲線とは、年齢ごとの平均身長・体重の標準範囲やばらつきを示したグラフであり、子どもの身長や体重を記録することで、その子の発育状態や成長の速度を視覚的に把握するためのものです。
一般的に、性別・月齢別に作られ、グラフ上の標準範囲を外れていないか、また横ばいや急激な変化がないかなどを確認することで、低身長や肥満などの異常、病気の早期発見につながります。
身長は単純な平均との比較だけで判断せず、成長曲線で子どもの位置を確認します。
-2SD以下:平均よりかなり小さい(低身長の可能性)
+2SD以上:平均よりかなり大きい(早熟や過成長の可能性)
これにより、成長スピードの異常や、治療が必要かどうかの目安がわかります。
身長の伸びのスピードと成長スパートをチェックする
年間の身長の伸びも重要な判断材料です。小学生の学年ごとの平均伸びと比較し、成長が遅れている場合は早めに相談を検討します。
例:小学1年生なら年間約6cm伸びるのが目安です。
子どもの身長が大きく伸びる「成長スパート」は限られた時期に集中しており、そのサインを見逃さないことが大切です。
受診の目安
低身長や過度の身長差が心配なときや、以下の項目に当てはまる場合は、小児科に相談し、必要に応じて小児低身長外来や小児内分泌科を紹介してもらいましょう。
原因が特定できれば、必要に応じて成長ホルモン治療などの選択肢もあります。
小児成長外来を受診する際は、母子手帳や乳幼児期・学齢期の身長・体重記録など、成長の過程がわかるものを必ず持参してください。加えて、健康保険証、普段飲んでいる薬がある場合はお薬手帳も必要です。
- 1年間の伸びが4cm未満
- 学校の平均身長と比べて極端に低い
- 兄弟姉妹や親の身長からみても不自然なほど低い
- 疲れやすい、体力がない、思春期の発現が遅い
小学生のうちに受けたい「成長ホルモン治療」の基礎知識

成長ホルモン治療は、低身長の原因や症状に応じて行われます。
| 方法 | 主に皮下注射で行い、医師の指導で家庭でも可能 |
| 開始時期 | 小学3〜4年生までに受診するのが望ましい |
| 効果・注意点 | 数か月で身長の伸びが見られることがあります。副作用は少ないものの、注射部位の痛みや軽い発疹に注意 |
成長ホルモン治療とは
成長ホルモン治療とは、成長期に成長ホルモンの分泌が不足しているために低身長となるお子さんに対して、不足した成長ホルモンを注射で補給し、正常な発育と身長の伸びを促す治療法です。この治療では、成長ホルモンのタンパク質が胃で分解されてしまうため、内服ではなく、自宅で自己注射する方式がとられます。治療効果を高めるためには、骨の成長期に、医師の指導のもとで治療を継続することが重要です。
小学生の身長を伸ばすために効果的なこと

睡眠:ぐっすり眠る
よく眠ることがいちばん大事なことです。夜10時〜深夜2時ごろは成長ホルモンが多く分泌される時間です。小学生は 9〜11時間の睡眠 が理想とされています。
食事:バランスのよい食事
栄養バランスを意識して多くの食材から栄養を摂るように心がけましょう。特に、タンパク質、カルシウム、亜鉛・鉄分を積極的に摂りましょう。
- タンパク質(肉・魚・卵・大豆) → 骨や筋肉の材料
- カルシウム(牛乳・小魚・小松菜) → 骨を丈夫に
- 亜鉛・鉄分 → 成長ホルモンの働きを助ける
運動:骨や筋肉を刺激して身体を元気に
外で走ったり、ジャンプをしたりする運動は、骨や筋肉に刺激を与えます。運動は睡眠の質も高めてくれるので一石二鳥です。
また、猫背などの不良姿勢を改善することも、身長が低く見えるのを防ぐ上で役立ちます。
規則正しい生活
夜更かしや不規則な食事は成長ホルモンの分泌に悪影響を与えます。成長ホルモンのリズムが乱れていないように、休日も含めて、なるべく同じ時間に寝起きするようにしましょう。
小学生の身長を伸ばす方法に関するよくある質問
Q.両親が背が低いと、子どもの身長も低くなりますか?
遺伝の影響は大きいですが、それだけでは決まりません。睡眠・食事・運動で伸びしろを引き出すことが可能です。
Q.身長が伸びにくいのはなぜですか?
遺伝や体質が大きく影響しますが、成長ホルモンの不足や、睡眠不足、栄養バランスの偏りなどが原因となることもあります。
Q.小学生のうちに牛乳を多く飲めば身長は伸びますか?
牛乳はカルシウムの供給源になりますが、それだけで背が伸びるわけではありません。食事全体のバランスが大事です。成長に必要な栄養素を特定の食品に偏らず、様々な食品から摂取することが大切です。
Q.プロテインは小学生の身長を伸ばすのに効果がありますか?
プロテインは「タンパク質の補助食品」であり、特別に身長を伸ばす効果はありません。
食事で必要なタンパク質(肉・魚・卵・大豆など)を取れていれば、基本的にサプリとしてのプロテインは不要です。どうしても食事が偏る場合やスポーツで消費が多い場合に限り、補助的に使うのは問題ありません。
Q.薬(ステロイドなど)は、身長に影響しますか?
長期間ステロイド薬を使用すると、成長ホルモンや骨の発育に影響して、身長の伸びが抑えられる場合があります。
ただし、医師が必要と判断して処方する場合は「病気の治療が優先」されます。ステロイドの種類や量、使い方によって影響の程度は異なるため、気になる場合は必ず主治医に相談しましょう。
Q.小学生のうちに成長ホルモンの治療をして身長を伸ばした方がよいですか?
一般的には、思春期が始まる前までに、早めに始めることが理想とされています。
Q.成長ホルモン治療は痛みはありますか?
注射の痛みはありますが、医師の指導で家庭での自己注射が可能です。
Q.どのくらいの期間治療すると身長が伸びますか?
個人差がありますが、治療開始後、数ヶ月で伸びを実感することが多いです。
まとめ
小学生の成長は個人差が大きく、遺伝の影響もあります。身長を伸ばす方法は「睡眠・食事・運動・生活リズム」を整えることで、子どもの持っている成長力をしっかり引き出すことです。
具体的には、深い眠りにつくことで分泌される成長ホルモンを最大限に活用し、カルシウムやタンパク質などの栄養素をしっかり摂り、骨に刺激を与えるような適度な運動を行うことが効果的です。
背を一気に高くする魔法の方法はありませんが、健康的な生活習慣こそが一番の成長のサポートです。
