AGA(男性型脱毛症)

AGA(男性型脱毛症)は、主に遺伝や男性ホルモンの影響によって起こる進行性の脱毛症です。特に生え際や頭頂部の毛髪が薄くなりやすく、20代以降の男性に多く見られます。日本人男性の約3人に1人がAGAを経験するとされ、治療を行わずに放置すると症状が進む可能性があります。そのため、早めの治療が重要です。

AGAの進行パターンとは

AGA(男性型脱毛症)の進行にはいくつかのパターンがあり、個人差がありますが、以下のような一般的な進行パターンが観察されています。

ノルウッド・ハミルトン分類

AGAの進行度合いを客観的に示すためによく使用される分類法です。この分類は、頭頂部と前頭部を中心に脱毛の進行をステージ1から7まで分けて示しています。

Ⅰ型

額の生え際に若干の後退が見られる程度で、ほとんど目立ちません。

Ⅱ型

額の生え際がM字型に後退し始め、早期の兆候としてわかりやすくなります。頭頂部にまだ影響はありません。

Ⅲ型

額の生え際がさらに後退し、頭頂部にも薄毛が現れ始める段階です。M字型が深くなります。

Ⅳ型

額の生え際と頭頂部の薄毛が進行し、2つの領域の脱毛部分が広がりますが、まだ髪で覆われた部分が多少残っています。

Ⅴ型

脱毛が顕著になり、額の生え際と頭頂部の薄毛部分がさらに近づきます。

Ⅵ型

頭頂部の薄毛領域と額の生え際が完全に繋がり、頭部全体で脱毛が一体化した状態になります。

Ⅶ型

頭の上下全体で髪が非常に少なくなり、通常、側頭部と後頭部に一部の髪が残るだけです。

AGA進行のパターン

AGAは主に以下の2つのパターンで進行します。

生え際の後退パターン

額の生え際からM字型に脱毛が始まり、徐々に頭頂部まで進行します。多くの男性はこのパターンを最初に経験します。

頭頂部の薄毛パターン

頭頂部(俗にいう「つむじ」の部分)から毛量が減り始め、次第にその範囲が拡大していきます。生え際とつながることで上記のステージが進行します。

AGAの進行速度

AGAの進行速度は個人によって異なり、急速に進行する人もいれば、ゆっくりと長期間をかけて進行する人もいます。遺伝要因やホルモンレベル、ライフスタイルが影響を与えることがあります。

ヘアサイクルの変化

通常の毛髪は成長期、退行期、休止期というサイクルを繰り返しています。AGAではこのサイクルが乱れ、成長期が短くなり、新しく生えてくる毛は細く短く、薄くなります。この毛周期の変化が、薄毛の進行に拍車をかけます。

ジヒドロテストステロン(DHT)は、男性ホルモンのテストステロンと5αリダクターゼという酵素が結合して生成されるホルモンで、脱毛を促進する要因として知られています。このDHTの影響により、髪を作る毛包の成長が不十分になり、本来2〜6年あるべき「成長期」が数ヶ月に短縮されます。その結果、髪が十分に育たないまま抜け落ち、徐々に薄毛や抜け毛が目立つようになります。

AGAの進行を抑えるには、早期の診断と適切な治療が重要です。専門医に相談し、AGAの進行にあった治療法を選択することで、進行を遅らせたり、改善することが可能です。

AGAの治療薬について

ここからはAGAの治療薬について説明します。抜け毛を予防しつつ、発毛を促しヘアサイクルの乱れを改善することで薄毛になるのを防ぎます。

フィナステリド/デュタステリド

AGAの基本的な治療には、フィナステリドやデュタステリドが使用されます。これらの薬は、5αリダクターゼの働きを阻害し、テストステロンがジヒドロテストステロン(DHT)に変わるのを防ぎます。DHTはAGAの原因となる物質であり、その生成を抑えることで抜け毛を防ぐ役割を果たしています。つまり、フィナステリドやデュタステリドは脱毛を抑える薬であり、発毛を直接促進するものではありません。

デュタステリドは、フィナステリドよりも強力にDHTの生成を抑える効果があり、より高い抜け毛抑制効果が期待されます。特に若年層では、脱毛よりも新陳代謝が活発で、フィナステリドやデュタステリドの服用だけで髪の状態が改善されることがあります。これは、脱毛を抑えることで発毛力が正常に発揮されるためです。

これらの薬は「発毛剤」ではなく、抜け毛を抑制するための薬です。発毛効果を求める場合には、ミノキシジルの塗り薬を併用することが推奨されます。ただし、フィナステリドやデュタステリドには性欲減退や勃起不全、肝機能異常といった副作用のリスクがあるため、医師の診断と処方が必要です。また、これらの薬は前立腺特異抗原(PSA)の数値を下げることが知られており、数値の解釈に注意が必要です。

ミノキシジル

フィナステリドやデュタステリドが脱毛を抑制するのに対し、ミノキシジルは発毛を促進する薬です。もともとミノキシジルは血管拡張剤として使用されていましたが、発毛効果が確認されたため、AGA治療に転用されています。ミノキシジルには塗るタイプと飲むタイプがありますが、治療ガイドラインでは塗るタイプが強く推奨されています。塗布することで血管が拡張し、血流が増大して発毛を促進します。ただし、内服は行わないように推奨されているため、注意が必要です。

AGAに関するよくある質問

AGA治療薬は保険適用されますか?

AGA治療薬は自由診療となります。自由診療の場合、費用は全額患者さんのご負担となりますので、治療の目的や効果を考慮しながら、ご自身の体調やニーズに合わせてご活用ください。

AGA治療薬は個人輸入することはできますか?

AGA治療薬を個人輸入することは、以下の理由から推奨されません。まず、個人輸入によって手に入れた薬品は、その製造過程や品質管理について不明確であることが多く、品質が保証されていないケースが多々あります。

特にジェネリックや海外で製造された製品では、正規メーカーの厳密な基準が守られていないこともあり、安全性に疑問が残ります。また、個人輸入品には偽物や成分が不適切な粗悪品が紛れ込む恐れがあり、それらは所望の治療効果をもたらさないばかりか、健康に重大なリスクをもたらす可能性もあります。

さらに、AGA治療薬は医師による診断と処方が求められるため、医師の指導なしに使用することは非常に危険です。誤った用量や使用法をしてしまうと、副作用のリスクが高まり、特にフィナステリドやデュタステリドのような副作用に注意を要する薬の場合、その危険性は一層増します。

さらに、個人輸入では医師による継続的な健康管理ができず、治療効果の確認や副作用の早期発見、治療計画の調整が行いにくくなります。これらの問題を踏まえ、AGA治療を行う際には、薬の安全性と効果を最大限に引き出すため、必ず専門医による診察と指導のもとで治療を進めることが望ましいです。医療機関での適切な処方を受けることで、安心して効果的な治療を行うことが可能になります。