脂肪肝

最近お酒を飲まない、あるいは痩せているのに脂肪肝という人が増えてきています。

自覚症状もなく見た目でもわからない「脂肪肝」とはいったいどんな病気なのでしょうか?「脂肪肝は本当に危険なのか?」

「一度なったら治らないのか?」

「脂肪肝はどうやって改善するのか?」

脂肪肝は健康に悪影響を及ぼしますが、すぐに命に関わる病気ではありません。ただし、放置すると深刻な健康問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

脂肪肝とは

脂肪肝は肝細胞の内部に中性脂肪が過剰に蓄積した状態です。脂肪肝を放置すると、脂肪肝炎という肝臓に炎症が起こった状態になります。異常を感じたら早めに医療機関を受診することが重要です。

脂肪肝ってどんな病気なの?

脂肪肝は、肝臓に中性脂肪が蓄積される状態を指します。脂肪肝の多くはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を伴い、脂肪肝の状態が続くと肝機能の低下や肝炎、肝硬変と進展していく恐れがあるため、早期に対処することが重要です。また、脂質異常症(高中性脂肪)や糖尿病といった生活習慣病を引き起こし、動脈硬化のリスクを高める要因ともなります。脂肪肝の種類によっては肝臓がんへ進行していくこともあり、放置するのはとても危険です。

脂肪肝の原因

脂肪肝は、生活習慣の乱れによって患う方が多いとされています。食事による摂取エネルギーが消費エネルギーよりも多いことで中性脂肪が肝臓にたまります。

主なものとして、以下のような原因があげられます。

  • 栄養の過剰摂取による太りすぎ(肥満)
  • アルコールの過剰摂取
  • 暴飲暴食
  • 運動不足
  • 脂質異常症
  • 高血圧
  • 糖尿病
  • ステロイド剤の服用
  • 栄養不良による代謝異常 など

全国健康保険協会の報告によると、脂肪肝になる原因の割合は、肥満による発症が48%、糖質の過剰摂取・糖尿病は18%、アルコール性は18%となっています。

もっとも脂肪肝になるリスクを上げるのは肥満であるといえるでしょう。

 (出典: 全国健康保険協会「脂肪肝」

脂肪肝の症状とは

脂肪肝は自覚症状がほとんどないため、初期段階では気づくことが難しい病気です。肝臓は「沈黙の臓器」と称され、炎症が存在しても初期の段階では自覚症状がほとんど現れません。このため、健康診断における画像検査や血液検査を受けることで初めて発見されることが多いです。

最初は気づかないことが多い

脂肪肝の初期にはほとんど自覚症状がなく、 顕著な症状が現れにくいのが特徴です。多くの人が自分の肝臓の状態に気づかずに過ごしてしまうことが多いです。軽度の脂肪肝は、肝臓に脂肪が蓄積されている状態を指しますが、この段階では肝機能に異常が見られないため、血液検査などで肝機能をチェックしない限り、気づくことは難しいです。肥満でない方でも、体重が2~3kg増加することで軽度の脂肪肝を発症する可能性があります。進行すると肝炎を引き起こし、線維化が進むことがあるため、早期に対策を講じることが重要です。

自覚症状が出るころには病状は進んでいる

脂肪肝は肝炎を引き起こし、最終的には肝硬変に至る可能性があります。脂肪肝が進行すると、血液の循環が悪化し、全身に酸素や栄養が充分に供給されなくなります。その結果、以下のような症状が現れることがあります。

  • 倦怠感や疲労感
  • 腹部の膨満感
  • 腹部に感じる鈍い痛み
  • 食欲不振
  • 黄疸の兆候
  • 身体のだるさや重さ

これらの自覚症状が現れる頃には、肝臓の炎症はかなり進行していることが多いので、早期の対策が必要です。

脂肪肝の検査

脂肪肝は、血液検査腹部エコー、CT検査などの検査で診断できます。原因が推定できない場合や、肝臓の強い炎症が疑われた場合は、肝臓の組織を採取して顕微鏡で調べる「肝生検」を行うこともあります。

血液検査でわかる脂肪肝の兆し

血液検査では、肝臓の機能や、肝炎ウイルスや特殊な病気などの二次性脂肪肝の原因を調べます。脂肪肝の血液検査で、ALT(GPT)、AST(GOT)、γ-GTPなどの数値が上昇します。ただし、血液検査で異常が見られない場合でも、画像検査で脂肪肝が認められることがあります

ALT(GPT)

肝細胞に多く含まれる酵素で、肝障害で値が上昇します。脂肪肝やアルコール性肝障害、慢性肝炎が疑われます。

AST(GOT)

心臓や肝臓、筋肉、腎臓の異常と関連し、肝障害や心筋梗塞が考えられます。

γ-GTP

51~100は要注意、101以上は異常を示す数値とされます。高値はアルコール性肝障害や慢性肝炎、胆汁うっ滞、薬剤性肝障害が疑われます。

ChE(コリンエステラーゼ)

脂肪肝患者で値が高くなることがあります。

腹部のCT検査、腹部の超音波検査

血液検査と合わせて画像診断で脂肪肝の診断ができます。肝臓に脂肪が蓄積されている場合、内臓が正常な肝臓と比較して白っぽく写ります。腹部エコーやCTといった画像検査で肝臓への脂肪の沈着具合を評価します。

腹部CT検査

X線を使って全身の断面像を撮影し、体表からでは確認できない内臓の状態を詳細に確認する検査です。

腹部超音波検査

お腹の表面に超音波を発する機械をあて、内臓からの反射波をその装置が受けとり電気信号にかえてモニターに写します。

脂肪肝の予防、治療法

脂肪肝(肝炎)を予防または改善するためには、過食、過度の飲酒習慣、運動不足を見直すことが重要です。現在、脂肪肝に対する特効薬は存在せず、主に発症原因に対する治療薬が使用されています。さらに、生活習慣の改善だけでは不充分な場合には、肝硬変や肝臓がんの進行を防ぐための薬物療法が行われます。

生活習慣を見直す

脂肪肝は、アルコールの摂取に起因するもの(アルコール性脂肪肝)と、アルコールを摂取しないにもかかわらず発生するもの(非アルコール性脂肪肝)がありますが、どちらも、生活習慣の乱れが原因となることが多いです。

脂肪肝を予防するためには、まず禁酒または飲酒の制限が重要です。過食を抑制し、バランスの取れた食事を心がけ、特に脂肪分や糖分の多い食品を控えることで、肝臓の健康を保つことができます。睡眠不足は代謝の乱れを引き起こし、体重増加や脂肪肝のリスクを高める要因となるので、充分な睡眠を確保することも大切です。

食事療法

脂肪肝の進行は、不健康な食生活によって悪化することがあります。以下のポイントを意識することで、脂肪肝の進行を防ぎ、健康を維持する手助けになります。

  • 脂質や糖質の多い食事を控える

高脂肪や高糖質の食事は、肝臓に負担をかけ、脂肪肝を悪化させる原因となります。

  • 炭水化物・タンパク質・脂質を含む栄養バランスの摂れた食事を心がける

健康的な食事は、炭水化物、タンパク質、脂質のバランスが重要です。良質なタンパク質(魚、鶏肉、大豆製品など)を意識的に摂ることで、筋肉量を維持し、基礎代謝を向上させることができます。

  • 夕食は入眠の3時間前までに済ませる

夕食を早めに済ませることで、消化の負担を軽減し、肝臓が休息する時間を確保できます。

  • 間食をしない

不規則な間食は、カロリーの過剰摂取や血糖値の急激な変動を引き起こす原因となります。

運動療法

適度な運動は脂肪肝の予防および治療において重要な役割を果たします。日常生活において運動を取り入れることが脂肪肝の予防、治療に有効です。

特に、ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、心肺機能を向上させるだけでなく、体内の脂肪を効果的に燃焼させる助けとなります。これらの運動は、特別な器具や施設を必要とせず、手軽に始められ、継続しやすいという利点があります。

体が脂肪をエネルギー源として利用し始めるのに一定の時間がかかるため、脂肪燃焼効果を高めるには、20分以上の運動が必要です。

運動はストレスの軽減や睡眠の質の向上にも寄与し、全体的な健康状態を改善する要因となります。運動を習慣化することで、体重管理や代謝の向上が図れ、脂肪肝の改善に寄与することができます。

薬物療法

脂肪肝に対する薬物療法は、主にその発症原因に基づく治療薬を使用します。生活習慣の改善が効果を示さない場合には、肝硬変や肝臓がんの進行を防ぐための薬物療法が行われます。使用される薬剤には、ビタミンE、脂質代謝異常治療薬、肝機能改善薬、糖尿病治療薬、降圧剤などがあります。

  • ビタミン剤

ビタミンEは、肝臓の炎症を改善したり、繊維化した肝臓を改善したりする効果が期待できます。抗酸化作用によって脂肪肝に関係する肝細胞の酸化ストレスを軽減できるためです。

  • 脂質代謝異常治療薬(フェノフィブラート、ペマフィブラート):

脂質異常症による脂肪肝の改善に期待できる治療法です。

  • 肝機能改善薬

肝機能改善のため、肝臓の破壊が進むことを予防する薬です。

  • 糖尿病治療薬(SGLT2阻害薬):

糖尿病治療薬は、肥満や糖尿病を合併する脂肪肝の方に重要な治療法となる可能性があります。SGLT2阻害薬は肝臓の保護ができることに加え、体重減少や血糖降下の効果があります。

  • 降圧剤(ARB・ACE阻害薬):

高血圧を患う方の脂肪肝には、高血圧の薬が用いられます。

脂肪肝に関するよくある質問

当院によせられる「脂肪肝に関するよくあるご質問」にお答えします。

脂肪肝に効くサプリメントはありますか?

脂肪肝に対して効果が期待されるサプリメントとしては、アスタキサンチンなどが挙げられます。アスタキサンチンは強力な抗酸化作用を持ち、肝臓の健康をサポートする可能性がありますが、これらのサプリメントはあくまで補助的な役割を果たすものであることを理解することが重要です。サプリメントだけに頼るのではなく、根本的な改善を図るためには、生活習慣の見直しが不可欠です。

脂肪肝には納豆やバナナは有効ですか?

肝脂肪が気になる方におすすめの納豆は、水溶性および不溶性の食物繊維が適切に含まれている優れたタンパク質源です。食物繊維は腸内環境を整えるだけでなく、コレステロールの吸収を抑える働きもあります。

バナナは食物繊維が含まれており、ビタミン、ミネラルが豊富な食品で、消化を助けるとともに、血糖値の急激な上昇を抑える効果があります。脂肪肝が心配な人にもおすすめです。

納豆やバナナを取り入れることは良い選択ですが、バランスの取れた食事を心がけ、暴飲暴食を避けるなどの規則的な食生活を送ることが、脂肪肝の予防や治療につながります。