乾癬という病気をご存じでしょうか?日本国内では40〜50万人以上の方が罹患していますが、まだまだ認知度の低い病気です。
主に皮膚に症状が現れますが、全身に発症することもあるため、さまざまなお悩みを抱えている方も多いでしょう。正しく理解されず、間違った知識をお持ちの方も少なくありません。
本記事では、乾癬の原因と症状、治療法を詳しく解説しています。
乾癬でお悩みの方は、ぜひご参考にしてください。
乾癬とは
乾癬(かんせん)とは、皮膚に慢性的な炎症症状が現れる病気です。
体のどの部分にも発症する可能性があります。発症部位や皮膚の症状なども個人差があり、複数の種類に分類されます。
まだまだ認知度が低い病気であるため、誤解されている方も多いですが、乾癬は人から人に感染することはありません。難治性の疾患ではありますが、治療によって症状を緩和させることは可能です。
乾癬の症状
乾癬の主な症状は、皮膚が赤くなって盛り上がり、銀白色のかさぶたのようなものができた後、ポロポロと剥がれ落ちます。体のどの部位にでも発症することがありますが、特に頭皮や肘、膝、お尻など外からの刺激が加わりやすい場所に発症しやすい特徴があります。
そのほかにも、指の関節が腫れたり痛みが生じたりなど、乾癬の種類によっては全く違う症状が現れます。
乾癬の原因
乾癬の原因は今のところまだ明確になっていません。
ただ、家族内で乾癬を発症しているケースもあるため、遺伝的な要素があると考えられています。
そのほかにも、環境因子も発症の引き金になるといわれています。自己免疫反応が起きやすい体質の方に、感染症や精神的ストレス、薬などの環境ストレスの刺激が加わることで発症しやすくなる傾向にあるのです。
乾癬の種類
感染は症状によって以下の5つの種類に分けられます。
- 尋常性乾癬
- 乾癬性関節炎
- 滴状乾癬
- 乾癬性紅皮症
- 膿疱性乾癬
それぞれ症状が全く異なります。乾癬の種類によって患者さまのお悩みの内容は変わってくるでしょう。
以下で種類別に特徴や症状を詳しく解説します。
尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
乾癬に罹患している患者さまの9割は尋常性乾癬です。
尋常性乾癬は、一般的な乾癬で、最初は数ミリの発疹から始まって、皮膚が赤く盛り上がり、銀白色のかさぶたのようなものができて剥がれ落ちるという症状がみられます。
頭皮・肘・膝・お尻など外からの刺激を受けやすい部位に発症しやすく、皮膚を掻くなどの刺激によって新たな発疹が生じることがあります。
肌に刺激が加わるような衣類は避け、ゆったり目のサイズのものを着用するなど工夫が必要です。
乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
関節に炎症が生じる乾癬を乾癬性関節炎、または関節症性乾癬といいます。
手足の関節やアキレス腱、足裏などに痛みや腫れ症状が起こります。症状が関節リウマチに似ているため、勘違いされる方もいらっしゃいますが、全く違う病気です。
多くの場合は、関節に症状が出る前、または関節症状と同時に皮膚にも症状が起きます。関節症状は日常生活に支障をきたしたり、重症化したりする恐れもあるため、早めの治療が大切です。
気になる症状があれば早めに医師に相談しましょう。
滴状乾癬(てきじょうかんせん)
0.5〜2mm程度の水滴のような発疹が全身に現れます。この滴状乾癬を発症するのは、乾癬患者の4%程の割合です。
小児や若者に起こりやすい傾向にあり、風邪などの感染症が原因で発症することがあるため、原因となる感染症の治療をすることで症状が治ります。
稀ではありますが、再発を繰り返すことで尋常性乾癬に移行してしまうケースもあります。
乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
尋常性乾癬が全身に広がっている状態です。体の90%以上に尋常性乾癬の症状がみられ、発熱や倦怠感などの症状も伴います。
乾癬患者の1%程の発症率で、不適切な乾癬治療、もしくは治療せずに放置していた場合に発症することがあります。
膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
発熱や皮膚の赤みのほかに膿疱が多数みられるのが特徴です。
一部だけに発疹症状がみられる現局型と、全身に発赤と膿疱がみられ急な発熱を伴う汎発性膿疱性乾癬があります。汎発性膿疱性乾癬は指定難病であり、発症するケースは珍しいといえます。発症した場合は、重症疾患であるため、多くの場合は入院での治療が必要です。
乾癬の治療法
乾癬は症状によって上記の5つの種類に分けられます。
それぞれに治療方法は異なりますが、ここでは乾癬の罹患率の9割を占める尋常性乾癬の治療法をご紹介します。
治療法は複数あるため、患者さまのライフスタイルや症状、治療効果などを考慮し、一人ひとりに適した治療法を選択します。
乾癬は根本的な原因が明確でないため、完治は難しい病気です。
しかし、近年の医療の進歩から、症状を抑えた状態をキープされている患者さまも多くいらっしゃいます。
落ち着いた状態を維持するためには、根気よく治療に取り組むことと、症状が悪化しやすい環境などを把握することが大切です。治療に加え、生活習慣などでコントロールしながら乾癬と向き合いましょう。
外用薬
塗り薬などの外用薬による治療では以下のような薬が用いられます。
- 活性型ビタミンD3
- ステロイド(副腎皮質ホルモン剤)
- ビタミンD3とステロイドが配合されたもの
活性型ビタミンD3は、皮膚細胞に働きかけ、鱗宵(りんせつ)といって銀白色のかさぶたのようなものを抑える効果がみられます。ステロイドは、免疫の働きと炎症を抑える効果があり、肌が赤くなる紅赤(こうはん)症状を落ち着かせます。
症状によって適切な薬を処方しますが、ビタミンD3とステロイドが配合されたものを処方することもあります。
内服薬
中等度から重症の場合は、内服による治療を行います。
乾癬の治療で用いられる内服薬の種類は以下の6つです。
- ビタミンA誘導体:皮膚細胞が過剰に作られるのを抑える
- 免疫抑制薬:過剰な免疫反応を抑える
- PDE4阻害薬:炎症の原因となる物質を抑える
- チロシンキナーゼ2阻害薬:サイトカインの働きを抑えて炎症を緩和させる
- 抗リウマチ薬:葉酸の働きを抑えて炎症を緩和させる
- ヤヌスキナーゼ阻害薬:サイトカインの働きを抑えて炎症を緩和させる
それぞれ副作用や注意点がありますので、医師と相談しながら症状に適した内服薬を選択するとよいでしょう。
その他の治療法
その他の治療法には以下のような方法があります。
- 光線療法
- 生物学的製剤
光線療法は、外用薬による治療では十分な効果がみられない場合や、皮膚症状が広範囲で薬を塗布するのが大変な場合に用いられます。
紫外線がもつ働きを利用した治療方法です。
紫外線には、過剰な免疫力を抑制する力があるため、皮膚症状が出ている部位に紫外線を照射し、症状の改善を促します。
外来の場合は週2〜3回、入院の場合では週4〜5回のペースで行う治療です。
一方で、生物学的製剤とは、内服療法や光線療法で十分な効果が得られなかった場合に用いられる治療法です。
生物学的製剤は、化学的に作られた薬剤ではなく、生物から産生される物質によって作られた薬剤です。消化されないよう点滴または皮下注射によって投与します。
免疫細胞の情報伝達を担うサイトカインの働きを弱めて炎症を抑え、皮膚の新陳代謝をコントロールする治療法です。
日本皮膚科学会が承認した施設のみで治療を受けられます。
乾癬に関するよくある質問
よくある乾癬に関する質問を以下でまとめています。
乾癬でお悩みの方や、不安に思うことがある方はご参考にしてください。
乾癬に効く市販薬はある?
乾癬に使用できる市販薬はありません。
ステロイド薬は市販でも購入が可能ですが、医療用ステロイド薬と市販のステロイド薬では適用が異なります。医療用よりも強さが抑えられているため十分な効果を期待できないでしょう。
また、市販の保湿剤も症状が改善されるものではありません。
医師の診断を受け、適切な薬を処方してもらうことが治療の近道です。
乾癬はうつるの?
乾癬は感染症ではないため、人に移ることはありません。発疹などの皮膚症状があるため「人から人に移る」と勘違いしている方もいらっしゃいますが、決して感染することはありません。
そのため、プールやお風呂に一緒に入っても何も問題はありません。接触することで感染することもないです。
まだまだ認知度が低い病気ですが、正しい知識をもつことが大切です。