吐き気と下痢が続いてつらいとき、何の薬を飲めばよいのか迷いますよね。
急性胃腸炎の治療は、原因を直接叩く薬よりも、水分を補いながら症状をやわらげる対症療法が中心になります。
市販の下痢止めを自己判断で使うと、かえって回復が遅れてしまうことがあるとされています。
この記事では、急性胃腸炎で処方される薬の種類と役割、下痢止めを安易に使わないほうがよいとされる理由、受診したほうがよい目安について解説します。
つらい時期を安全に乗り切るための手がかりにしてください。
急性胃腸炎の薬より先に大切な水分補給
急性胃腸炎で最初に意識したいのは、薬よりも水分をどう補うかです。
急性胃腸炎は、ウイルスや細菌などによって胃や腸に急な炎症が起き、吐き気・嘔吐・下痢・腹痛といった症状が出る状態を指します。
原因が感染によるものは感染性胃腸炎と呼ばれ、なかでもノロウイルスやロタウイルスによるものが多いとされています。
多くはウイルスによるもので、特別な薬を使わなくても数日で自然に軽快に向かうことが多いと考えられています。
だからこそ、その間に体を守る水分管理が治療の土台になります。
脱水が起こりやすい理由
急性胃腸炎では、嘔吐と下痢によって水分と電解質(ナトリウムやカリウムなど)が同時に失われます。
さらに、吐き気があると水分を口から入れることも難しくなるため、失う量に対して補う量が追いつかなくなりがちです。
その結果、脱水が進みやすくなります。とくに子どもや高齢者は体内の水分の余裕が少なく、短時間で状態が変わることがあるため注意が必要です。
水分の取り方と経口補水液の使い方
吐き気があるときの水分補給には、いくつかのコツがあります。
- 一度に大量に飲まず、少量ずつ回数を分けてとる
- 常温に近い温度にする
- 経口補水液など、水分と電解質を一緒に補えるものを選ぶ
- 柑橘系のジュースや炭酸飲料、カフェインは控えめにする
嘔吐した直後は30分ほど時間をおいてから、ティースプーン1杯程度(5mLから10mL)を5分おきに少しずつ試してください。
なお、スポーツドリンクは糖分が多く電解質が少なめのため、脱水対策としては経口補水液のほうが適しているとされています。
水分をまったく受けつけない、飲んでもすぐ吐いてしまうという状態が続く場合は、点滴などの対応が必要になることがあります(保険診療の範囲で行われます)。 我慢せず医療機関に相談してください。
急性胃腸炎で処方される薬の種類と役割
医療機関では、症状に応じていくつかの薬が組み合わせて処方されます。主なものを整理しました。
| 薬の分類 | 主な役割 | 使われる場面 |
|---|---|---|
| 整腸剤 | 腸内の環境を整える | 下痢が続くとき |
| 制吐剤(吐き気止め) | 吐き気や嘔吐をやわらげる | 水分がとりにくいとき |
| 胃粘膜保護薬・制酸薬 | 胃の粘膜を守る | 胃痛や胸やけがあるとき |
| 解熱鎮痛薬 | 発熱や痛みをやわらげる | 熱や頭痛を伴うとき |
| 抗菌薬 | 原因となる細菌に働く | 細菌性が疑われる限られた場合 |
いずれも症状や全身の状態をふまえて医師が判断します。
整腸剤
整腸剤は、腸内の細菌のバランスを整えて回復を助ける目的で使われます。
乳酸菌や酪酸菌などの生きた菌を含む製剤が用いられ、抗菌薬と併用する場合には、抗菌薬の影響を受けにくい耐性乳酸菌製剤が選ばれることもあります。
下痢を強制的に止める薬ではないため、体が原因物質を出そうとする働きを妨げにくいという特徴があります。
抗菌薬と一緒に処方される場合には、抗菌薬の影響を受けにくいタイプが選ばれることもあります。
吐き気止め(制吐剤)
吐き気が強くて水分がとれない状態は、脱水につながりやすい状況です。
そのため、嘔吐を抑えて水分をとれるようにする目的で制吐剤が使われることがあります。
年齢によって使える薬が異なるため、子どもの場合はとくに医師の判断が必要です。
胃の粘膜を守る薬
みぞおちの痛みや胸やけがあるときには、胃の粘膜を保護する薬や胃酸を抑える薬が処方されることがあります。
嘔吐を繰り返すと胃の粘膜が荒れやすくなるため、その負担をやわらげる位置づけです。
解熱鎮痛薬
発熱や頭痛、腹痛を伴う場合に使われます。
発熱や頭痛には、胃への負担が比較的少ないとされるアセトアミノフェンが用いられることが多い一方、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は胃の粘膜に負担がかかることがあるとされています。
空腹時の服用や飲み合わせについては、医師・薬剤師の指示に従ってください。年齢や持病によっても選ばれる成分が変わります。
抗菌薬が使われる限られたケース
抗菌薬が処方されるのは、細菌性の胃腸炎が疑われる場合など、限られたケースです。
急性胃腸炎の多くを占めるウイルス性には抗菌薬は効きません。血便がある、高熱が続く、症状が重いといった状況で、必要と判断されたときに検討されます。
多くは症状と経過から判断されますが、血便や高熱がある場合には、便の検査が行われることもあります。
なお、市販薬で対応する前に、症状の内容と経過を確認しておくことが大切です。
急性胃腸炎で下痢止めを使わないほうがよいとされる理由
「とにかく下痢を止めたい」と考えるのは自然なことですが、急性胃腸炎では下痢止めの使用に注意が必要とされています。
下痢が体の防御反応でもあるという考え方
下痢は、つらい症状であると同時に、原因となるウイルスや細菌、その毒素を体の外に出そうとする働きでもあると考えられています。
そのため、市販の下痢止め(止瀉薬)で無理に腸の動きを止めてしまうと、原因物質が腸内にとどまり、かえって回復が長引いたり、症状が強くなったりすることがあるとされています。
腸の動きを止めると、原因となる菌やその毒素が腸内にとどまる時間が長くなり、体の外に出るまでの期間が延びることがあるとされています。
また、腸の動きが過度に抑えられることで、お腹の張りや腹痛が強まることもあると考えられています。
とくに、発熱や血便を伴う場合に自己判断で下痢止めを使うことは避けたほうがよいと考えられています。
下痢止めを使ってよいケースの判断は医師に任せる
一方で、下痢止めがまったく使われないわけではありません。
原因や症状、生活の状況によっては処方されることもあります。その判断は、診察をふまえて医師が行うものです。
整腸剤と下痢止めは名前が似ていても役割が異なります。違いを次の表に整理しました。
| 項目 | 整腸剤 | 下痢止め(止瀉薬) |
|---|---|---|
| 目的 | 腸内環境を整えて回復を支える | 便の回数や水分の量を減らす |
| 腸への働き方 | 腸内の細菌のバランスに働きかける | 腸の動きや水分の吸収に直接働きかける |
| 使う場面 | 下痢が続くときに広く用いられる | 原因や症状によって医師が判断する |
感染性胃腸炎では、原因物質を出す働きを妨げにくい整腸剤が選ばれることが多いという違いを押さえておきましょう。
東京センタークリニックは、日本橋駅から近い内科・皮膚科などの診療を行うクリニックで、急性胃腸炎の相談にも対応しています。
急性胃腸炎の薬と合わせて気をつけたい食事と生活
薬とあわせて、食事と家庭内での対策を整えておくと、回復と感染の広がりの両面で助けになります。
症状が強い時期の食事の考え方
吐き気が強い時期は、無理に食べる必要はありません。
水分を優先し、食欲が戻ってきたら少しずつ戻していきます。
- 回復に合わせて、おかゆやうどんなど消化のよいものから始める
- 脂質の多いもの、香辛料などの刺激物は様子を見ながら
- アルコールは控える
- 乳製品は体調に合わせて少量から試す
一気に元の食事に戻すと、症状がぶり返すことがあります。数日かけて戻していくつもりで進めましょう。
家庭内でうつさないための対策
感染性胃腸炎は、家庭内で広がりやすいという特徴があります。
- 石けんを使った手洗いを徹底する
- タオルの共用を避ける
- 吐物や便を処理するときは使い捨ての手袋とマスクを使う
- 吐物や便の処理には0.1%、ドアノブや便座などには0.02%に薄めた次亜塩素酸ナトリウムを使う
- 処理後は換気をする
ノロウイルスなど、アルコール消毒が効きにくいとされるウイルスもあるため、手洗いと次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が基本になります。
急性胃腸炎で受診したほうがよい目安
多くは自然に軽快に向かいますが、受診したほうがよいサインもあります。
急性胃腸炎が疑われるときは、まず内科での相談が基本になります。お子さんの場合は小児科が窓口になります。
すぐに受診したいサイン
次のような症状があるときは、早めに医療機関に相談してください。
| 症状 | 対応の目安 |
|---|---|
| 水分がまったくとれない、飲んでも吐いてしまう | 速やかに受診する |
| 尿が出ない、極端に減っている | 速やかに受診する |
| 強い腹痛が続く | 速やかに受診する |
| 血便が出る | 速やかに受診する |
| 高熱が続く | 速やかに受診する |
| 意識がぼんやりする、ぐったりしている | 速やかに受診する(反応が乏しいときは救急要請も検討) |
これらは脱水が進んでいる場合や、別の疾患が隠れている場合に見られることがあります。
子どもや高齢者で特に注意したいこと
子どもや高齢者は、大人に比べて脱水が進みやすいとされています。
- 子どもの場合:泣いても涙が出ない、おむつが濡れない、機嫌が悪くぐったりしている
- 高齢者の場合:食事量が落ちている、口の中が乾いている、反応が鈍い
こうしたサインが見られるときは、様子を見ずに早めに相談してください。持病がある方や薬を飲んでいる方も、脱水によって影響が出ることがあるため注意が必要です。
急性胃腸炎が軽快するまでの期間の目安
見通しが分かると、必要以上に不安にならずにすみます。
急性胃腸炎の症状は、多くの場合、数日程度で落ち着いていくとされています。
症状が落ち着くまでの経過
嘔吐は比較的早い段階でおさまり、下痢はその後しばらく続くという流れが一般的とされています。
便の状態が完全に戻るまでには、症状が落ち着いた後さらに数日かかることもあります。
経過には個人差があるため、目安として捉えてください。
長引くときに考えられること
次のような場合は、別の原因が隠れている可能性もあります。
- 1週間以上、下痢や腹痛が続いている
- いったん良くなったのに再び悪化した
- 体重が明らかに減っている
- 繰り返し同じような症状が起きる
自己判断で市販薬を続けるのではなく、改めて受診して原因を確認することをおすすめします。
まとめ
急性胃腸炎の薬についてのポイントは、次のとおりです。
- 治療は水分補給を土台とした対症療法が中心になる
- 処方される薬は整腸剤・制吐剤・胃薬・解熱鎮痛薬などで、症状に応じて選ばれる
- 抗菌薬が使われるのは細菌性が疑われる限られたケースで、ウイルス性には効かない
- 下痢止めは自己判断で使わない。下痢は原因物質を出す働きでもあるとされる
- 水分がとれない、尿が出ない、血便があるときは速やかに受診する
- 子どもや高齢者は脱水が進みやすいため、早めの相談を心がける
つらい症状が続くときや、水分がとれないときは、早めに医療機関にご相談ください。東京センタークリニックでは、症状や生活背景に合わせた診察・治療をご相談いただけます。