イボ(尋常性疣贅:ゆうぜい)

イボとは皮膚から盛り上がったできもののことをいいます。そしてイボは、様々な原因によって起こります。一般的なイボはウイルス性のもので尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)という長い病名がついています。ここでは、この尋常性疣贅について詳しく解説していきます。

また、足などの皮膚の同じ場所に物が当たって起こるウオノメや、子供に多くプールなどで感染する水イボ(伝染性軟属腫)、皮膚のアカが溜まる粉瘤(ふんりゅう)、高齢者に多い脂漏性角化症なども「イボ」として認められます。ウイルス性イボとなかなか見分けがつきにくいこともあり、治療法も違うのできちんと診断し治療を受けることが大切です。

イボ(尋常性疣贅:ゆうぜい)とは

ほとんど誰にでも生じる一般的な硬いイボのことで、通常は表面がザラザラしています。形状は円形または不規則な形で、色は明るい灰色、黄色、褐色、または灰黒色をしています。大きさは直径が約1センチメートル未満のものがほとんどです。このイボは、けがをしやすい場所、例えば膝、顔面、指、肘などによくできます。尋常性疣贅は周囲の皮膚に広がることがあります。

イボ(尋常性疣贅:ゆうぜい)の原因とは

イボ(尋常性疣贅)はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により生じます。

感染は接触感染により、皮膚に微小なキズがあったときHPVが体内に侵入して皮膚の角化細胞に感染を生じます。HPVに感染した角化細胞は分裂速度が速まるため、その部分の表皮が肥厚してイボになります。子宮頸がんもHPVが原因の病気として知られていますが、尋常性疣贅とはHPVの種類が異なります。

感染の機会は、大勢の人が裸足で行動するプールサイドや公衆浴場の脱衣所などが多く、家族内では皮膚の直接の接触の他、共用しているタオルや風呂場の足拭きなどを介しての感染もあります。傷がつきやすい手足や、アトピーや湿疹でひっかきやすい肘やわきの下の皮膚などにもしばしばみられます。

皮膚や粘膜の小さな傷からウイルスが感染すると、皮膚の細胞が異常に増殖して3〜6ヶ月で目に見えるイボが生じます。

イボ(尋常性疣贅:ゆうぜい)の症状とは

足裏、足指、手のひら、手指などに、1cm以下程度の小さな皮膚の盛り上がりが生じます。多くの場合で1箇所だけでなく、数ヶ所に同時発生します。一部のイボは近くに多発するとお互いにくっついて癒合し、1つの局面(平たい盛り上がり)を形成します。最初は足にできて、触ってしまうことにより手指や手のひらに症状が拡がってしまうこともあります。

通常は痛みやかゆみなどはありませんが、足の裏ではイボが硬いところに当たったり、巨大化して亀裂(ひびわれ)ができると痛みを伴うことがあります。

イボコロリなどの市販薬で自宅治療で悪化し、逆にイボが大きくなってしまったり、別の部位に多発してしまったりなど、自己流での治し方で症状が悪化してしまうことがあるので気をつけましょう。早期発見、早期治療開始により、他の場所に拡がるのを防ぎます。

尋常性疣贅は大人にもできますが、一般的にはお子さまに多く生じます。

イボ(尋常性疣贅:ゆうぜい)の治療法は

イボ(尋常性疣贅)の治療方法には、冷凍療法、サリチル酸を使った治療、レーザー治療、電気焼灼療法、免疫療法などさまざまな方法があります。治療の選択は症状やイボの場所、大きさによって異なり、再発を防ぐためには根気よく治療を続けることが重要です。

イボ(尋常性疣贅:ゆうぜい)の診断・検査法は?

イボ(尋常性疣贅)の診断は通常肉眼(見た目)で行います。肉眼のみで診断が難しい場合は、硬い部分をメスで削ったり、ダーモスコープという拡大鏡を用いてより詳細に皮膚の状態を観察します。

これらの方法でも尋常性疣贅かどうかはっきりしない場合、皮膚の一部を切り取って(皮膚生検)、顕微鏡で組織検査を行うことを検討します。

イボは一般的にふくらみのある「できもの」のイメージですが、足の裏にできた場合には体重がかかることによってあまり隆起せず、外観が魚の目やタコと似ていることから受診が遅れがちになるケースがあります。

液体窒素での治療が主流

−196℃の液体窒素を使用し、イボを直接冷やして凍結させる方法です。複数回の治療を基本とし、1回の治療から次の治療までは1週間以上の間隔を空けます。

液体窒素をイボに当てる際には、綿棒を使う方法のほか、スプレーで液体窒素を当てる、冷やしたピンセットでイボを直接つまむなどの方法があり、部位やイボの大きさにより適切な方法を選択します。いずれの治療法も、全身的な副作用の心配はありませんが、治療した部位に痛みや赤みを生じることがあります。

これらの症状は通常、当日中ないし翌日には消失しますが、翌日以降も強い痛みが続いたり、皮膚に水ぶくれができるなどの変化が現れた際には、病院の受診を検討してください。また、治療した部位に色素沈着を生じる可能性もあるため、特に顔や首など目にみえる部位にイボができている場合は、慎重に治療を行います。

漢方薬内服などの治療法もある

ほかにも、ヨクイニンと呼ばれるハトムギからつくられる漢方薬を内服する治療や、角質を柔らかくする塗り薬を使うこともあります。

内服の漢方薬ハトムギの成分であるヨクイニンを服用することで免疫力を高めてイボの改善をはかります。即効性はありませんが、頻繁に通院できない患者さまには向いています。

また、サリチル酸軟こうの塗布や絆創膏による治療は、イボをふやけさせた後にイボが取れるのを待つ治療です。

いずれもイボを根治させる絶対的な方法はありませんが、根気よく治療を続けることが大事です。

イボ(尋常性疣贅:ゆうぜい)の予防法は

尋常性疣贅(イボ)は、ヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発生します。感染を防ぐためには、清潔を保つことが最も重要です。特に皮膚が傷ついた部分や湿った環境ではウイルスが感染しやすくなるため、注意が必要です。早期の対策と予防で、イボの発生リスクを減らすことができます。

免疫力を高める

ウイルス性イボは、免疫力が低下したときに発症することが多いため、免疫力を高めることが予防につながります。

そのため、ストレスを溜めないことや適切な睡眠時間を確保すること、バランスの良い食事や適度な運動など、規則正しいライフスタイルを送ることが大切です。

紫外線対策をしっかり行う

紫外線によってダメージを受けた皮膚は肌の再生能力が低下します。そのため、劣化した皮膚が身体に残り、再生能力が落ちてイボになるため、紫外線対策を行なうことを徹底しましょう。特に紫外線の影響を受けやすい頭皮や顔〜首によく発生します。

日焼け対策の方法としては、日焼け止めクリームをこまめに塗り直す、帽子をかぶる、長袖長ズボンで肌を隠す、 日傘をさす、などが有効です。

イボにはいろいろな種類がある

ウイルス性イボは、形状やできた部分によりそれぞれ種類が異なります。また、紫外線や加齢によりできるイボもあります。紫外線や加齢が原因のイボはウイルス感染ではなく、長年の紫外線による障害や、加齢による皮膚の老化、また洋服の摩擦による刺激などが原因で起こると言われています。突然起こるものではなく、年月をかけて徐々にイボができるのが特徴です。

種類に応じて原因や治療法は異なるので、自分のイボはどれに該当するか、下記の図を参考にしてみてください。

ウイルス感染によるイボ

ウィルス性のイボには様々な種類があります。

  • 尋常性疣贅
  • ミルメシア
  • 青年性扁平疣贅
  • 尖圭コンジローマ
  • 伝染性軟属腫

それぞれみていきましょう。

尋常性疣贅

「石イボ」と呼ばれるイボです。子供にできやすいと言われていますが、自覚しにくいタイプです。傷口から感染することから、皮膚を掻いた際にイボになってしまうことがあります。また、尋常性疣贅ではあっても足の裏にできやすいものは足底疣贅と呼ばれています。痛みもなく、見た目からタコや魚の目と間違われやすいですが、表面を削ると出血を伴います。

ミルメシア

水イボに似ており、掌や足の裏にできるタイプです。噴火口のように盛り上がる点が特徴で、赤くなるだけではなく痛みも伴います。

青年性扁平疣贅

粟から米粒大程度の大きさで、主に顔や手、背中、首に症状が現れます。
薄い褐色で、特に若い女性に多くみられるタイプのイボです。

尖圭コンジローマ

先端がとがった乳頭状のものや、鶏冠状、あるいはカリフラワーのような丘疹です。
外陰部や肛門周辺にできやすい、性行為によって感染するタイプのイボです。
浸潤した表面と異臭が特徴で、2〜3か月ほどの潜伏期間の後に発症します。

伝染性軟属腫

「水イボ」と呼ばれるイボです。1歳から7歳ほどの子供にみられることが多く、特にアトピー性皮膚炎を患っている子供に発症します。

また、周辺の皮膚にまで飛び火することもありますが、特に多いとされているのがプールでの感染です。接触感染を起こすため、裸で接触するプール等で伝染性軟属腫をうつされてしまうこともあります。また、イボの中には粥状の乳白色物質が含まれます。

ウイルス以外が原因のイボ

紫外線や加齢によるイボには大きく分けて2種類あります。いわゆる老人性イボといわれる脂漏性角化症、もうひとつが中年イボや首イボと呼ばれる軟性線維腫(スキンタッグ)です。

脂漏性角化症は、「老人性イボ」とも呼ばれます。基本的に中年以降に多く見られ、ウイルス感染ではなく、長年の紫外線の影響や皮膚の老化でできるのが特徴です。シミと混ざって存在していることが多く、シミから発展して老人性イボになることもあると言われています。少し盛り上がったものや突出したしこりになるものもあり、指で削るとボロボロとかさぶたのようにとれることもあります。

軟性線維腫(スキンタッグ)は、「首イボ」や「中年イボ」とも呼ばれます摩擦や加齢、紫外線などが原因で起こると言われています。皮膚が薄くて弱い部分にできやすいのが特徴で、一般的には中年以降に多いと言われています。

イボについてのよくある質問

足の裏にイボができた。ウオノメみたいに自力でとってしまってもいいの?

イボは自分で削ったり触ったりして取ろうとすると感染・化膿などのおそれがあるため、おやめください。さらに、取る時には相当の痛みが伴います。

また、まれにイボが悪性腫瘍の場合もあります。気になるイボができた場合には、必ず皮膚科を受診してください。

イボは市販薬でも効果あるの?

イボの種類によっては、市販薬で改善に期待できる場合があります。ただし、基本的に市販薬でイボをとるのはおすすめしていません。その理由として挙げられるのが次の2つです。

  • イボの種類によっては効果がないため
  • 悪化のリスクがあるため

2つの理由について、それぞれ解説します。

まず、市販薬で首のイボをとるのがNGな理由は、効果が得られないためです。首まわりにできるイボの多くはやわらかく、サリチル酸の使用には適していません。また、ウイルス性ではないため、ヨクイニンを飲んでも効果は得られないでしょう。首まわりのイボは、病院で治療してもらう方法が確実です。

次に、悪化のリスクがあることも、市販薬でイボをとるのがNGである理由のひとつです。サリチル酸を皮膚の薄い部分に塗ると、白くふやけて剥がれてしまいます。悪化や肌トラブルのリスクがあるため、使用はおすすめできません。

いずれにしても、イボという診断をもとに医師の治療を受けることを推奨します。